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「なぁ。お前も一緒に入ったらどうだ?」
「嫌だよ。中2にもなってビニールプールなんて」
将人がこう言った刹那、墨を吸った筆のように纏まった尻尾を振った。遠心力で飛ばされ纏まった水しぶきが将人の服にかかる。
「何しやがる!」
「濡れたろ? 着替えたらどうだ?」
この野郎やりやがったな。将人はあっと言う間にトランクス一枚となりビニールプールに飛び込んだ。アーサーと一緒にじゃれ合い、水をかけ合いながら遊び合う。
それはまるで将人と遊章が二人で遊んでいた時の光景そのままであった。
この暑い中買い物に出ていた久美子が帰ってきた。庭で二人ではしゃぐ姿を見て「何してるんだうちの息子は」と、思いながらも既視感を覚えていた。
「須和さんとこの子と遊んでいる時もあんな感じだったなぁ」
そんなことを思いながら台所に行き、買ってきたばかりのスイカを切り始めた。普通に切り分け皿に乗せる。アーサーの分はカブトムシが食べる程度の大きさに切り分けて醤油を入れるような小皿に乗せる。
「将人ー! アーくーん! スイカ食べるよー」
将人がすっと立ち上がろうとした時、アーサーはトランクスの裾を噛んでいた。そのまま立ち上がった将人のトランクスはずり落ちて足に引掛かかりビニールプールの中で転んでしまった。将人の汚い尻がカンカンと照る太陽に照らされる。
おれしーらね。アーサーは噛んでいたトランクスから口を離してさっさと軒先に戻りブルブルと体を震わせて水を払った。久美子はそんなアーサーを優しくタオルで拭く。アーサーを拭きながらビニールプールで尻丸出しで倒れている将人を呆れたような目で眺めた。
「あんた、何を尻丸出しでバカやってる?」
「違うって! アーサーのせいで!」
「アーくんがこんなことするわけないでしょー。ねーアーくん?」
久美子は「ねー」と言いながら首を傾けた。するとアーサーも目を閉じてにっこりとしながら媚びるように首を傾けた。
やっぱり、あいつ生意気だ。犬になって調子に乗ってやがる。
将人はそんな親友が心から好きなのであった。
おわり
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