プロローグ

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「俺らも帰ろうぜ?」 3人は廊下を歩いていた。すると、階段の前で先程ファミレスでパーティーをやると言って出て行った連中がざわめきながら集まっているのが見えた。階段にはKEEP OUTと書かれた黄色い規制線が敷かれていた。 祐也は規制線の前にいたクラスメイトに話を聞いた。 「何かあったの?」 3人は規制線の向こうを見る。階段を降りた先にある踊り場にはいくつか血痕がついている。 「うえっ、誰か階段から落ちたの?」 「誰が落ちたか知らねぇのか?」 「ああ、俺らさっきまでずっと教室でダベっていたから知らねぇ」 「須和くんが落ちたんだ…… 皆で階段降りてたらなんか知らないけど須和くんが落ちて」 それを聞いた将人は絶望に叩き落とされたような気がした。つい数十分前まで笑っていたあいつがいきなり階段から落ちたと聞いて気が気ではなかった。 「で、病院なのか?」 クラスメイトは階段を指差した。階段にも血痕が付いていた。それも2箇所、8段目と3段目である。 「階段の角に2回頭打って止めに踊り場の床に直撃だぜ? 生きてると思うか?」 将人はそれを聞いて音もなく通知表と筆記用具しか入っていない鞄を落とした。物心付いた頃にはずっと傍にいた遊章との思い出が蘇る。最近こそ疎遠だったが12年間は一緒にいた思い出がある、その思い出が将人の心の中で走馬灯のようにくるくると回り続ける。 将人は茫然自失とした状態で家に帰った。リビングの前の廊下を歩き自分の部屋に入ろうとしたところで母、久美子(くみこ)に首根っこを掴まれる。 「将人ぉ? 通知表も見せずにスルー出来ると思ったら大間違いよ」 その顔は修羅そのものであった。だが、その修羅の顔さえも遊章が死んで心に穴がぽっかりと空いた将人にとってはのっぺらぼうの様なものである。将人はおもむろに鞄から通知表を出した。通知表のあまりの惨状に修羅の顔は大魔神の形相に変わる。 「将人、正座」 久美子は将人を正座させて延々数時間説教をするつもりだった。しかし、目の前で糸の切れた人形のようになっている将人の姿を見て「何かがヘンだ」とすぐに察した。 「将人、学校で何かあった?」 もしかしてイジメられているのではないか。久美子の中にそんな考えが過った。気が気でない久美子を前にして将人は重い口を開いた。その全てを聞いて久美子は驚くと同時に泣いた。 「あの子、小学生の時は良く家に来てたわねぇ。確か毎日来てる時期もあったわね」 将人の家に遊章が遊びに行くことは決して少なくなかった。家も近いことから家族ぐるみの付き合いとなっていた。
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