第一章、チワワを拾ったよ

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第一章、チワワを拾ったよ

 将人は中学2年生に進級した。遊章が亡くなった階段の踊り場には始めこそ大量の花が手向けられていたのだが、階段が狭くなるとのことで早期の撤去がされることになった。クラス替えに関しても数人が変わっただけでほぼ1年生の時とあまり変わりが無かった。  時は流れ…… 5月の下旬、将人は祐也と慎吾とで学校帰りに中間テストの打ち上げをファミリーレストランで行っていた。打ち上げと言ってもテストが終わって感想を愚痴りあうだけの単なる駄弁り会に過ぎない。メニューは山盛りポテトフライにドリンクバーと言う金のない学生にありがちなメニューである。これで数時間滞在されるのだから店の方としてはたまったものではない。  何時間も実のない話をしたところでふと窓を見ると水滴がぽつぽつとついていることに気がついた。 「やべ、雨だ」 「浅野、傘持ってないのか」 「今日降水確率40%だったから大丈夫だろうって思ってたんだよ」 「俺のやってるゲームだと40%は100%だぞ」 「お前のゲームのことは知らねぇよ」 どうせ通り雨だろうと思い雨が止むのを待つが雨は益々強くなっていく。その雨をきっかけに中間テストの打ち上げを解散することにした。 ファミリーレストランの玄関前で雨に包まれた町並みを眺める3人。すると祐也がワンタッチで傘を開いた。 「じゃあ俺帰るわ」 「済まない、入れてってくれ」 祐也と慎吾は帰る方向が同じだったので問題は無かった。しかし、将人は帰る方向が正反対だった為に立ち往生と言うことになってしまった。 「なぁ、無理すれば3人入るだろ? 一旦俺の家に寄ってくれよ」 「いやぁ、方向逆だし、3人はさすがに無理があるだろ」 そう言って祐也と慎吾は相合い傘で去っていってしまった。何という友達甲斐の無い奴らだ。将人は舌打ちをしながら踵を返して先程会計を済ませたばかりのカウンターに戻って行った。傘があるのではないかと思い棚を見回すがあるのは子供向けの玩具やカプセルトイばかりで傘は扱っている様子が無い。こう言う時ぐらい箱入りのダースで持ってきてぼったくり値で売るチャンスではないだろうか。そもそも飲食店で傘を売っている方が不自然である。将人は諦めて走って家に帰ることにした。ここのファミリーレストランから走れば10分ぐらいで到着(つ)くはずである。将人は雨の中のマラソンをする羽目になった。
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