プロローグ

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プロローグ

 3月の終業式が終われば春休みになるその日に人生の終業式を迎えた少年がいた。 名前は須和遊章(すわ ゆうしょう) 明日から春休みと言うこともあり、気分が高揚していた。最後のホームルーム後、通知表を友人と共に見せあっていた。所謂陽キャラと呼ばれるスクールカースト上位の男である。成績優秀で人柄も良くクラスの人気者であった。スクールカースト上位同士は成績を見せあっても特に恥じる様子は無い。現に遊章の通知表の数値は5が立ち並んでいたので何も恥ずかしがる必要が無かった。 このグループから離れること数メートル。自分の席で青ざめなら通知表を眺める少年がいた。名前は浅野将人(あさの まさと)やばい、親に殺される、勘当ものだとガクガクと震えていた。通知表の数値は最高でも専門教科の技術家庭科の3であった。後は2か1かと言ったところである。将人は所謂陰キャラと呼ばれるスクールカースト下位の男である。  この2人、幼稚園の頃から続く幼馴染で親友同士なのだが、中学校に入ってからスクールカーストが成立したことで疎遠になっていた。将人はそれを寂しく思っていたが遊章の方は特に寂しく思わずに陽キャラ同士のグループの中心にいるために将人のことなど気にしている様子が無かった。あくまで将人からの主観ではあるが。 「須和ー ファミレスで進級パーテーやろうぜー」 「おう、いいねぇ」 そう言うとスクールカースト上位陣は皆で固まって教室から出て行った。教室に残ったのはスクールカースト下位の所謂「あまりもの」だけになってしまった。 「中学校なんてアホでも進級出来るのにパーティーやる奴らもアホだなぁ」 将人にこう話しかけるのは同じくスクールカースト下位の坪井祐也(つぼい ゆうや)であった。恰幅も良く、アニメや漫画が大好きでアダルトゲーム(兄に代理購入して貰っている)が趣味の所謂デブオタクと呼ばれる存在であった。 「特に須和の奴なんかスカシててムカつくねぇ」 遊章を悪く言うのは同じくスクールカースト下位の田辺慎吾(たなべ しんご)であった。分厚い眼鏡を掛け運動神経も悪く成績も悪く部活もパソコン部であるためにオタク扱いされていた。 将人は元は親友の遊章のことを悪く言われて腹を立てた。 「そんなに悪くいうなよ」 「お前ら元は親友だろ? それなのに中学に入った途端に疎遠になったじゃないか。人でなしじゃないか」 「中学に入って人間関係が変わっただけだ」 「案外お前の方が一方的に親友って思ってただけで、あっちはお前なんて数多くの友達の一人程度にしか思われてなかったんじゃないか?」 それを言われると否定する材料がなかった。将人は殆ど遊章としか遊んでいなかったが、遊章の方は他の友達と遊んでいた。慎吾の言う通り俺はあいつにとっては友達の一人に過ぎなかったのか。そう思うと胸が痛んだ。 そこで実のない話をすること数十分。まだ昼食前と言うこともあり3人の腹がぐぅーと鳴った。
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