1041人が本棚に入れています
本棚に追加
二度のスキルキャンセルを成功させた後、ファラオとの間合いを詰めては攻撃をしかけたズンセック。
だが、あっさりとこちらに引き返してきた。
「珍しいな。間合いを詰めたらずっと至近距離で嫌がらせをするスタイルじゃなかったっけ?」
「あぁ。可能ならな。だが、奴に攻撃をいれても『1』しか表示されねぇと、相手に踊らされている気がしてな」
ズンセックの攻撃でさえ、3しかダメージを与えることができなかった。
スキルキャンセルを成功させたときに指を狙った2回と、最後の腹部への斬撃の計3回。
戦略とすればズンセックに軍配があがったが、依然としてこちらの不利に変わりはなかった。
「こうもダメージ『1』が続くと、圧倒的な差を感じるよな」
俺はそう言うと、ズンセックは意外な言葉を返してきた。
「『情報の』な」
「『情報』?情報次第では奴にこれ以上のダメージを与えられるとでもいいたそうだな」
俺はズンセックにそう尋ねると、返ってきた答えは『YES』だった。
ズンセックの分析はこうだった。
守備力と攻撃力において、数字からくるダメージ判定およびダメージ量はほぼ一定を指す。
たまに、『会心の一撃』によりダメージ量が増えたり、その逆で『不出来の一撃』により少量のダメージになるが、この2つが発生する条件は極めて低い。
だが、『不出来の一撃』がこうも連続して現れるのは、レベル差以外の『何か』が働いているとズンセックは推測していた。
が、ズンセックをはじめ、俺達はファラオの事をまだ何もわかってはいない。
躊躇している間に、ファラオは動く。
凪払うようにゆっくりと水平に手を振った。
すると地面から大量のアンデッドモンスターが低い声を上げながら現れた。
「おいおい、このBOSSは召喚も出来るのかよ」
そう言いながら『ウィダーガリー』のメンバーは各々に出現したモンスターを片付け始めた。
「さすが、機動力トップクラスのチームだな。処理が早い」
「褒めてるのか、ライ。俺達は雑魚処理に来たんじゃねーぞ?それに、見ろよ。敵を観察したいのは俺達だけじゃないみたいだぜ?」
ズンセックはそう言い、ファラオを指差した。
ファラオはモンスターを出現させたあと、後ろへと下がり、『ウィダーガリー』のメンバーが闘っている状況を観察していた。
「あいつもこちらを分析しているのか?!」
「みてぇだな。奴は本能のみで攻撃してくる獣系モンスターとは違う。相手を分析し、戦略を練り、実行できる、知力の高いBOSSのようだ。
不可解なダメージ『1』のカラクリを解かないと俺達に勝ち目はないみたいだな。」
そう言うと、ズンセックは俺の肩を叩いた。
「ライ。お前の戦術プランが出来たら教えてくれよな?俺は今から闘いに集中してくる。戦術的に必要なら俺達を助けてもいいし、見棄ててくれてもいい」
そう言うなり、ズンセックは再度ファラオとの距離を詰めた。
最初のコメントを投稿しよう!