第31話 初診:無口な王

12/29
前へ
/345ページ
次へ
それから、アンデッドの数が減る度にマークスは果敢にファラオに攻撃を仕掛けていた。 「おぃ、マークス。陣形が崩れるから、単独でBOSSへの深追いは控えてくれ」 ズンセックから忠告を受けたマークスは一端は従うが、状況を見極めては、またファラオに対して武器を向けていた。 マークスは連続攻撃が得意なプレイヤー。 ファラオに攻撃の隙を与える前に複数回ダメージを何度も与えていた。 だが、お得意の連撃を開始し始めたとき、事は起きた。 マークスが連撃中に脚を踏み外し、通常の軌道とは違うモーションになった。ファラオの腹部への攻撃のつもりが、軌道が逸れたことにより、ファラオの右足を斬ってしまった。 その時に、一瞬だけ表示された数字がマークスの視界に飛び込んだ。 『2』 何度も斬りかかっては表示されていた『1』ではなく『2』の数字が。 マークスは体勢を立て直す為、ファラオから少し離れ、呼吸を整えた。 「い、今のは……偶然、いや……もしかしたら……」 不用意に立ち止まっているマークスに対して、ファラオは狙っていた。 ライは必死に声をかける。 「おぃ!来てるぞ!!」 だがマークスは考え事をしている様子であり、無防備そのもの。ライはシールド魔法を詠唱し、マークスの身の安全を確保した。 が、ファラオはまだマークスへの接近を止める様子がない。 「……ちっ。とりあえず」 ライは傷ついたマークスのライフを一先ず回復させようと回復魔法を詠唱しはじめた。 そのとき、ファラオはライが近づくのを察知したのか、シールドを破壊しようとしていた動作を中断し、距離をとった。 結果、マークスへの被害は無く、ライフゲージを回復させることに成功した。 「どうしたんだよ、あんた!!ズンセックから忠告されてた割には無茶が多い。距離をとるぞ?」 そう言い、ライはマークスの身柄を確保し、ズンセック達のいる所まで近づいた。 「ナイス、院長っ!助けるの早い~」 「ったく、マークス。今日はどうしちまったんだ?!副リーダーのお前らしくねぇじゃねーか」 他のメンバーも二人の無事を喜んだ。 「ズンセック……本当に発言していいのか?」 「……見つけたのか?」 ライの言葉を聞くなりズンセックの声が少し低くなった。 「あぁ。まだ可能性の1つだがな」 ライは短くそう言った。 「……いや、まずは可能性でもいい。直ぐに共有しよう。今ならファラオとの距離は少しある。話し合いをするにはチャンスだ」 ズンセックがそう切り出すと、メンバー全員を集め近寄った。 「手短に話す。先に言うが確証はない。だが、不可解な点があった事を共有したい」 「いいさ、続きを」 ズンセックも喰い気味だった。 ライは乗せられるように続きを話し始めた。
/345ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1041人が本棚に入れています
本棚に追加