第31話 初診:無口な王

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「さっき、マー」 「ま、待ってくれっ!俺の話を先に聞いてくれ!」 ライの言葉を遮ったマークス。居合わせた他の者はマークスの行動に驚いたが、ズンセックが質問した。 「何故止めるマークス?お前、おかしいぞ?」 「親分、すまない。先に発言させてください」 「お前なぁ」 飽きれ口調のズンセック。 「いいよ、あんたから先に話してくれ」 ライは主張せずマークスに譲った。 「いいのか?ライ」 「あぁ、大丈夫さズンセック。闘いに関する情報は1より2の方がいい」 ライの言葉を聞いて落ち着いたズンセックは「マークス、言ってみろ」とだけ発言した。 「あぁ。俺が斬りかかった時に、ファラオの脚に攻撃してしまったんだ。そのときに『1』ではなく『2』と表示された。この意味がわかるか、みんな。奴の弱点は脚だ!それも右っ。間違いない」 マークスは一通り話したあと、笑いだした。 「かもな」 「かも?何を言っている。何も出来ない治癒師(ヒーラー)の分際でっ!!攻撃出来ないお前に替わって、危険な目に逢いながらやっとの思いで見つけた弱点に対して『かも』って何だよっ!!」 怒り出すマークスをズンセックが制止させた。 「可能性の話だ」 「当たり前だ!だが事実だ!じゃあ、お前の戦術とやらを早く言ってみろよ!」 煽るマークスに挑発されることなくライは淡々と話し始めた。 「ファラオが来るかもしれない。手短に話す。マークスを助けた時に、回復魔法を詠唱した。その時に、ファラオは攻撃の手を緩め、向こうから距離を取った。俺を見ながらな」 「それがどうした!!恩着せがましい奴だ。自慢話か?」 「おかしいと思わないか?マークスをはじめ、詠唱中の俺も含め無防備だ。シールドはあったが、ファラオが攻めるには一番イージーなタイミングだ。それにも関わらず攻めずに後退した。 それに、マークスを助ける前にも回復魔法を詠唱したが、その最中にファラオから襲われた奴はいたか?」 「ライの言いたいことは、まさか……」 「あぁ。奴の種族はマミー。初めて出逢った種属だ。奴の弱点は打撃ではなく、『回復魔法』だと仮定すれば、奴の行動に納得がいく」 「治癒師(ヒーラー)、お前……」 「あぁ。奴に回復魔法を唱えてもいいか?」 「か、回復魔法を?!」 リコを初め、皆がライの発言に驚いた。ズンセックも頭を抱えて笑っていた。 「ふはははは。何言い出すと思えば」 「親分っ!こいつ頭がおかしい!敵に回復魔法だと?ふざけるなっ!!これまで俺達が削ってきたライフを回復させてしまったらどう責任を取るんだよっ!!」 マークスはライの発言を全否定した。 当然だ。 死と直結しているショートレンジの戦法のメンバーが、やっとの思いで削ってくれた。 ファラオのライフゲージが9割はまだ残っているが、それでもダメージ『1』を重ねるに重ね、やっとの想いで全体の1割を皆で削った。 にも関わらず、ライは真逆の提案をしてきたのだ。 ズンセックをはじめ驚く表情を浮かべる中、ライだけが自信ありげに雄々しく立っていた。
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