第31話 初診:無口な王

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「マークス。あんたの言っていることもわかる。それに、初めに言ったろ?『確証』なんてない。不可解な行動を俺なりに分析しただけだ。だから共有して、皆に尋ねている。 『奴を回復させてしまうリスクはあるが、回復魔法を奴に唱えてもいいか?』と。 それと、奴に回復魔法を浴びせる為の戦術も考えた。 だが、この場にいる全員が納得して作戦通り動いてくれないと、恐らく成功はない」 そこから、ライはファラオに回復魔法を浴びせる為の行動パターンの全てを手短に話した。 「これが俺の案だ」 「すげぇ……これが噂の『白衣の参謀』治癒師ライのプランなのか……」 『ウィダーガリー』のメンバー2人は、ライの策戦を聞いて感服していた。 リコも、その様子をみて嬉しそうな表情を浮かべている。 ズンセックは少し険しい表情を浮かべ、マークスは強い懸念を抱いているような仕草をみせた。 「み、皆!惑わされるな!幾ら道筋が良くても、最後にするのは『回復』なんだぞ?!俺は違うっ。今の治癒師のプランの最後を『攻撃』にするだけで、奴の右脚にドでかい一撃を与えられる!!そうだろ?!」 「確かに……な」 ボソリと呟くメンバー。 それをみるなり、マークスは切り出した。 「じゃあ、多数決(・・・)で決めようぜ。『勿論、最後は攻撃だ』と言う奴、手をあげてくれ」 自信ありげに切り出した。が、マークスの言葉で手をあげた者は、マークス以外いなかった。 「裏切る……のか?みんな……」 力ない言葉がマークスの口から溢れる。 「マークス、まずは落ち着け」 「親分も諦めるんすか、宝……」 「諦めてない。お前は勘違いしている。ファラオに回復魔法をするのも、右脚が弱点なのも両方仮定だろ?両方合っている可能性 もあれば、両方間違っている可能性だってある。勿論、どちらか片方だけの可能性もだ。 ここまで絶望的な数値しかダメージを刻むことしか出来なかった。それなら、ライのような馬鹿げた作戦を先に試してみるのもアリだと思う。 仮に、ファラオが回復したとしても、マークス。お前の作戦で大ダメージが与えられるかもしれないだろ?まずはライの作戦を試そうじゃないか。な?」 ズンセックの提案にマークスは黙ったままだが頷きはした。 「さぁ、そうと決まれば駄目元でやってやろうじゃねーか!!」 ズンセックの雄叫びに続いて他の者も各々に声を上げた。 「良かったね、院長ぉ!!」 「……あぁ」 喜びを見せるリコとは対称的に、ライには引っ掛かる点があった。
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