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ズンセックのスキルキャンセルにより、ファラオに一瞬の隙が生まれた。
だが、これだけではライの詠唱時間を捻出出来たとはまだ言い難い。
ここで第3の策が発動する。
連擊に定評のあるリコとマークスが間合いを詰めていた。
まずはリコ。
水龍の後遺症により属性系の技は未だ出せずにいるが、通常の攻撃なら可能。
色は纏わなくとも、斬擊を浴びせる程の速さは健在。
相変わらず表示する数字は『1』が続いたままだが、最後の一撃が終わった段階でファラオの体勢がやや仰け反った。
堪えることも、躱す為の体重移動も許される好条件が整った。
ライの作戦はまだ終わらない。
「マークスさん!!」
リコが叫び、ポジションを譲った相手はマークス副リーダー。
『ウィダーガリー』の攻撃担当。彼の連続したナイフ捌きはライ達も知っていた。
だからこそ、リコの後にした。
彼の連撃は長く、最大回復魔法を詠唱しつつ近づくに充分な時間を稼げるからである。
だが、ズンセックは異変に気づく。
「おかしい……あの構えは連撃じゃねえ!!お前、まさか……」
「見ててください、親分っ!!」
マークスは持っていたダガーに念を送っていた。身体全体から溢れ出たオーラを武器に籠めていたのであった。
マークスの武器が暴れるように光を纏っている。
【冥土の土産】
武器に外部からエネルギーを無理やり注入し巨万のダメージを与えることができる技。
代償として、武器は一回の攻撃で存在を消す。耐久力の少ない『ウィダーガリー』の中でも、マークスのこの技があるからこそ、長期戦を間逃れてきた実績があった。
だが、それはライのプランとは別。
本来の作戦は、ファラオに傷を与える事ではなく、回復魔法を浴びせる事であったが、裏切り者は違う未来を欲したようだ。
「終われぇっ!!」
籠める想いをこの一撃にかけているのだろうか。気合いを発しながら勢い良く振りかざした。
狙うは一ヵ所。
右脚以外ありえない。
皆で繋いだ連鎖はマークスの攻撃で止まった。一瞬の事であったため、攻撃直後は時がとまったかのように静けさが辺りを包んだ。
静けさは様々な場面を報せる。
マークスの武器は役目を終え、粉々になり空気中に消えた。
一撃に全集中していた為、マークスは肩で息をしていた。
「みた……かよ?俺達……の闘いに治癒師は必要……ねぇんだよ」
先ほどから動かないファラオに対して、睨むように発言したマークス。
肩で息をしているマークスは、何故か呼吸が整わない。
まだ彼の息を乱す何かが働いているのかもしれない。
それは『表示』だ。
彼を安心させる『表示』がまだ確認出来ていないからである。
祈るような気持ちでファラオを眺めはじめたマークスは「今ので倒れてくれよな?」と言いたそうな表情を滲ませた。
唇を少し噛み、武器を所持していないのに構えの体勢を解除できずにいる。
【終われ】
場に居合わせている皆は、マークスの攻撃を許し、結果を求めた。
だが、表示されたダメージ量は、
『1』だった。
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