第31話 初診:無口な王

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俺を助けてくれたのは、ファラオだった。 確かに、背格好や、雰囲気は先ほど闘ったファラオと同じであった。 「仮面はつけないのか?それに包帯は取ったのか?」 そう尋ねるとファラオとイシスはお互いの顔を見て笑った。 「ははは。なかなか面白いことを言う。ライと申されたな?この国では亡くなった王族、それも功績を遺した者だけが仮面を身につけ、包帯で身を保護し祭壇で眠る。 残念だが、私はまだここでは死ねない。この国の民をもっと幸せにせねばならないからな。それにそなたの傷も癒せばならないのでな」 そう言い、ファラオは俺のライフゲージを回復してくれた。 「イシス。すまぬが、ライを客人として出迎えてほしい。彼は他国からの密偵ではなさそうだ」 「えぇ。ファラオ様のことを『呼び捨て』に『死者扱い』とご無礼が過ぎますが、ファラオ様もそう仰っていただけるのであれば、幸いです」 イシスはそう言い、笑った。 その後、俺はイシスに案内され、とある建物に案内された。イシスの話では、ここはファラオなど、王家直属の者だけが使用できるらしい。 このような建物は、ファラオが統治している街や村に点在しており、作戦会議や民を招いての集会所としても使用しているとのこと。 「おいおい、良いのかよ?俺を客人として扱っても?」 「あぁ、ファラオ様が仰ったんだ。問題ないさ。それにファラオ様からお願いも頂いたからな」 「お願い?何を頼まれたんだ?この村の再生か?」 「ライ、君は察しがいいな。その通り。見てのとおりこの村の建物は崩壊した。だが、村人は怪我人はいるが死者はいない。 蘇生系の魔法士がこの村に到着するまでに少し時間がかかる。 そこで、ライ。君にお願いがある。ファラオ様直々のお願いだ。必ず引き受けてほしい」 なるほどな。 そう来たか。 ここで、俺が『はい』と言えば、 『ライの活躍により、民は救われました。めでたし、めでたし』 と表示され、フリーフィールドへ帰還できるって流れだな? 理解した! 「よし、任せろっ。全員俺が治癒してやる」 俺は迷う事無く、高らかに宣言し、回復魔法の魔方陣を出現させた。 「ははは。ライ、君は本当に愉快な人間だ。こちらからの報酬も聞かず、無償で回復魔法を詠唱しようとしていたのかい?」 「ん?そうだが?」 俺はこんなプチイベントさっさと終わらせて戻りたいんだよ。 「客人に無償でお願いするほど、ファラオ様は意地悪ではないさ。勿論、報酬はあるさ。 ファラオ様が得意とし、私なんかを含め、多くの人に伝授していただいた、」 「まさか……」 「その通り。ファラオ様からライに【詠唱法】を伝授するように仰せつかったのさ」 イシスは俺にファラオの詠唱法である【古代詠唱】を伝授しようとしていた。
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