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「良いのかよ?俺はあんたの作戦を台無しにした張本人……だぜ?」
マークスはライの作戦に対し、申し訳なさそうにしている。
重い空気が流れた。
確かに、マークスの裏切り行為でライの意識は一時不明になったのは事実。
リコやズンセックはライの優しさを知ってはいるが、それでも本人が腹を立てていたらと不安視していた。
「台無し?いやいや、マークスの攻撃の速さは証明されたじゃないか?!移動だけではリコの方が速い。
ただ、あんたの攻撃をはじめ、何かの動作を起こすモーションの速さは、他の誰よりも速い。奴に浴びせる一撃はやはりあんたが最も適任だと思うんだが、嫌か?」
「な、何を言う……。嫌なはず無かろう。こ、こんな俺をまだ信用してくれるのか」
溢れる涙と同時にマークスの瞳の輝きが元に戻る。
ライはマークスに対して憎悪の念は1ミリも存在しない。そればかりか、マークスの能力を買い、再度託そうとしていた。
疑いを知らない赤子のような心で。
「当たり前だ。俺の即時詠法でファラオは俺の回復魔法に気を取られている。だから今、マークスの一撃はバレにくい。
だが、またあんたが、ファラオに一番接近してしまう。危険な位置だ。頼めるか?」
ライの問いにマークスは応えた。
『当たり前だ。俺はあんたに命だけでなく、心まで救われたんだ。恩人だ……必ず成功してみせる!!絶対にだ』
力強いマークスの言葉。
ライの優しさに、この場に居合わせた者の絆が更に深まった瞬間だった。
「親分……」
「どうした、マークス」
「親分が戦う前、『大丈夫だ、ライは医者だ。信じてやれ』と言ってくださいましたよね?その意味がやっとわかりました。それに、親分が治癒師を慕う訳、なんとなくわかった気がします」
「慕う?バカ言え、あいつは俺の顧客だ。それ以上でもそれ以下でもねぇ」
そう言うズンセックであったが、何処か嬉しそうな表情を浮かべていた。
「せーの!!」
ライの合図で皆が動き出す。
先ほどの作戦と同じ動き。
アスティーとモガの2人の俊敏性は落ちていた。無理に敵を排除せず、一定の距離感で敵を引き付けている。
だが、それだけでは進路は塞がったまま。
そこで、
「いくぜぇ!!」
ズンセックが先頭となり巨体を活かしながら敵をなぎ倒すように無理やり突っ込んだ。
『ウィダーガリー』のリーダーを務めているだけあり、フィジカルは高い。
ファラオは近づくズンセックに対し、複数の魔法を用い狙ったが、突如現れるシールド魔法に阻まれる。
「ライの奴……本当に魔方陣なしで即時発動してやがる。なんとも恐ろしく、なんとも頼りになる奴だ」
ライの狙いは当たっていた。
ズンセックが近づけば『スキルキャンセル』を警戒し、ズンセックに気が向く。
そこで、リコが……
「はい、バランス崩してね?!」
フリーで近づくことが可能となる。
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