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頭を抱えながら暴れるファラオ。止まない苦しみは継続的に心を襲うばかりか、ライフゲージをも蝕んだ。
溶ケル溶ケル。
回復の恩恵を知らないマミーは身体中から黒い湯気を発しながら踠いていた。
「はぁ……はぁ……治癒師さんと親分の作った回復薬、ちゃんと当てることができたよな……俺」
無我夢中で割ったマークス。呼吸は酷く乱れていた。
「マークス……ナイスだ」
「親分……俺……」
続いてライの姿を確認しようとするマークス。彼の目に飛び込んだのは、親指を立てたライの姿だった。
「素晴らしい一撃だ、副リーダーさん」
ライからの労いの言葉に瞳を潤すマークス。ズンセックは何も語らず、ポンポンと2回、マークスの背中を優しく叩いた。
苦しむファラオの前に佇む治癒師ライ。
「改心の一撃の効果は抜群のようだな、ファラオ」
ファラオのライフゲージの減少が止まり、回復薬βの効果が役目を終えた。
ファラオのライフゲージの残は全体の3%程。
ライが古代詠唱で回復魔法を唱えた瞬間にファラオが死ぬだろう。
語らずとも、ライの作戦は『チェックメイト』を迎えていた。
「治癒師さん、ラストアタック、お願いしますっ」
マークスの発言に対し、アスティー、モガ、ズンセック、それにリコも頷いた。
他の誰でもない、ライに託した。
ライを呪い殺そうかとしているかのように、ファラオは悍ましいオーラを醸し出されていた。
深い……深い……憎しみを抱いて。
そんなファラオに対しライは、無警戒なまま近づいた。
「い、院長!!まだ生きてるよ?!危ないっ」
「あぁ、知ってる。わざとトドメを刺していない。意識あるうちに、ファラオに伝えないといけないことがあるからな?」
心配するリコを他所に、ライはファラオに対し、端的に伝えた。
「『紅鯱は俺達で倒しておいたぞ。安心しろ』」と。
ライの言葉を聞いた瞬間、ファラオの殺気は嘘のように晴れ、そのまま座り込み、天を仰いだまま静かになった。
「……なぁ、みんな聞いてくれ。お願いだ。ファラオを倒さずに、このままにしたいが許してくれるか?」
ライが他の者に伝えた言葉にメンバーは驚いた。
「攻略を諦めろと、俺達にお願いしているのか?ライ……」
「あぁ。もしかしたら、そうなるな」
「え?!ど、どういう事、院長?!もう魔力なくなっちゃったの?」
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