第31話 初診:無口な王

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慌てた様子のリコ。 「いや……ファラオをこのまま倒したくないのさ。世話になったからな……少しでいい。もう少しでいい。時間をくれないか?」 そう言い、ライはズンセックに回復薬βを渡した。 「これが最後の1個だ。俺に何かあったら……な?」 「……あぁ゛!もう!!わかったからそんな眼で俺をみるな。安心しろ。何かある前に使ってやる。だから、さっさと済ませて……こいよ?」 ズンセックの言葉に背中を押されたライは言葉を進める。 「ファラオ。あんたは俺のことを覚えていないどころか、知らないかもしれない。 だけどな、俺は憶えちまったんだ。あんたの歴史に、発動法。あと、あの時、俺を逃がしてくれたあんたの優しさもな。 それに、イシスに約束しちまったからな『ファラオの助けの一つになる』って」 ライは躊躇いをみせていたのだ。 ファラオを助ける為に憶えた魔法で、ファラオを倒してしまうことに。 倒せば、祭殿だけが残るかもしれない。ファラオを慕う民が作り上げ、残してきた祭殿が今後、誰もいないままになるかもしれない。 崇める為の祭殿は役割を果たせなくなれば、その日から廃墟となってしまう。その一手をライの回復魔法で行いたくなかった。 そして、 ライがイシスの名前を出した瞬間に、ファラオはライの顔をじっと見た。 「な、なんだよ?仮面のまま見つめられると怖いんだが……やっぱり白黒つけたいのか?」 身構えるライ。だが、ファラオは落ち着いたまま。 紅鯱が倒され、今やサフランカを統治する者が不在となってしまった。 であるならば、イシスを知る者が目の前にいるのであれば…… 託してみたい……未来を。 「あ……れ?い、院長!ファラオが、何かを渡そうとしているよ?」 リコの言葉に初めて気がついたライ。確かに、ファラオの手には、ほどかれた短い包帯が握りしめれられていた。 「ん?これを俺が受けとれば良い……のか?」 ライは、恐る恐る手を伸ばした。 【ライはファラオから『王族の包帯』を受け取った】 ファラオはライの顔を再度じっくり見たあと一回頷いたかと思えば、空中に文字が出現した。 【ファラオは降参を申し出た】 「嘘……だろ?!BOSSが降参だと?!」 驚くマークス。 「どういう理由かは知らねぇ。だが、ファラオを説得し、敗けを認めさせたんだ。ったく、ボスを説得するだなんて、どんな魔法を使ったのやら。 ま、どんな勝ち方であれ、ライが引き寄せた『勝利』だ。」 【ダンジョンクリア!】 討伐BOSS:祭殿に眠る旧皇帝 獲得スター:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 今回のイベントで、スター総獲得数第3位に『ウィダーガリー』が食い込み、また、最高難度を示す11個の☆を獲得した者として、ライとリコ、そして『ウィダーガリー』 の名が刻まれた。
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