第32話 後継者と秋山からの依頼

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ここはフリーフィールドの中でも、深い森に位置している。だが、この辺りのモンスターは比較的大人しく、滅多に人を襲ってはこない。 以前は危険地帯の1つとして恐れられていたのだが、新しいBOSS(統治者)が現れて以降、闘争心を奪い取られたモンスター達が違うエリアへ逃げてしまったのだ。 俺はこのエリアの主と手合わせがしたくて今日はやってきた。 「大丈夫なの……イオちゃんの稽古に付き合いたいだなんて……」 「大丈夫。古代詠唱の特訓がしたいだけだから。それに、今のソネルは詐欺(ペテン)師ではなくて、サーカスだろ?」 ソネルがサーカスの場合、イオマンテは比較的大人しく従う。流石、サーカスのスキルを既にコンプリートしているだけはある。 俺も安心して、特訓に励める。 今回、イオマンテと闘いたいのは2つの理由があったからだ。 1つ目は古代詠唱の練習。実戦で使用するにはまだまだ鍛練が足りない。 2つ目はこれだ。 ファラオが降参する直前に渡してきた、謎のアイテム【王族の包帯】 イベント後、ズンセックと解析しようとしたが、市場に出回っていないレアアイテムらしく、どういう効果があるかわからなかった。 アイテム欄から説明欄を見ようにも『説明文章はありません』しか記載されていない。 こいつの分析をしたい。 こいつが何なのかを。 ズンセックと調べて判らずにいた。残る使用道とすれば、 【戦闘中での使用】 包帯なんだ。 恐らく治癒系のアイテムだとは思う。俺がある程度ダメージを受けた後、使用できるか確認しようと思う。 街中ではライフゲージが減らないから、簡単に試すなら、ここ。フリーフィールドに来るのが一番手っ取り早い。 「さぁ、イオマンテ。俺が稽古してやろう。最近、挑戦してくる野良モンスターが減って退屈してただろう?」 俺が構えた瞬間、イオマンテは俺に攻撃をしてきた。 以前に比べ、移動スピードも上がっている。 飛びかかりながら爪で俺を裂こうとしたが、ギリギリのところでシールド魔法を発動した。 だが、イオマンテの破壊力が勝り、シールドは砕け散った。 イオマンテからすれば、今の一撃でさっさと終わらそうとしていたのだろう。 シールド魔法で直撃を防がれたのが意外だったのか、真剣に構え始めた。 「ったく……お前、また強くなっただろ?シールド魔法を直ぐに破壊しやがって」 「ライさん……今のが古代詠唱?」 「あぁ。魔法陣を介さず、魔力帯の生成により即時発動できる古代詠唱さ」 「すごぃ……嘘のように……速い」 イオマンテの肩に乗っていたソネルは驚いていた。 ソネルはセンスの塊だ。 俺なんかが教えても、伝授できるとは1mmも思えないが、コツくらいは後で伝えておくか。
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