第32話 後継者と秋山からの依頼

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攻撃を防がれたイオマンテにも意地があった。 認識阻害(ハイディング)スキルを駆使し、巧みに姿を消しながら俺に攻撃してきたのだ。 イオマンテの守備力は極端に低下しているが、攻撃力のない俺に対しては思う存分使用している。 イオマンテの認識阻害率は100%。つまり、絶対に目視では確認できない。 「イオマンテめ、殺気をも制御してやがる。全く気配がない……どれだけモンスターと闘ったらここまで強くなれるんだよ、ったく……」 全く見えないイオマンテの攻撃を避けるのは不可能に近かった。 どの方角から襲いかかってくるのか、判らず魔法で対処のしようもなかった。 とりあえず、傷の手当てをするために取り出したアイテム。 【王族の包帯】 「さて、どんな効果があるかな。これで少しは回復したり……してな」 俺は包帯を手にしたときに、ある違和感を感じた。 それは、包帯を手にしても【使用ボタン】が表示されなかったのだ。 普通、アイテムを持てばボタンが表示され、好きなタイミングで使用できる。 だが、包帯にはそのボタンが表示されなかった。 【使用ボタン】が表示されないアイテムにはいくつかのパターンがある。 ①鑑賞用の美術品であること②使用する機会が限定的であること そして、一番多いのは…… ③アイテムではないこと アイテムとは、そもそも消耗品である。ファラオにぶっかけた『回復薬β』がいい例だ。使用したり、破壊すれば無くなる。 勿論、スナッチされても無くなる。 この包帯が、とても美術品には見えない。ましてや、他の用途で使用するパターンも考えにくい。 つまり、この包帯は『アイテムではない』可能性が高い。 であるならば、次に考えられるのは…… 【装備品】 俺は、装備画面から王族の包帯を選択してみた。 ーーーーー 王族の包帯を装備されますか? ※ステータス及び属性等に変化が生じます ーーーーー ビンゴ。 こいつは、どうも装備品のようだ。しかも、武器ではなく、装飾品の類い。 俺は治癒師(ヒーラー)であり、一切の武器を持つことができない。 だが、装飾品は違う。ほとんどのジョブは装飾品を装備することは可能である。 表示された注意書きが気になるが、迷っていても解決や解読には到らない。 【王族の包帯】を装備した。 ……。 ライフゲージは、変化なし。 「なんだ、これ?!」 「ラ、ライさん……前!!」 包帯に気を取られていた俺の目の前に、姿を現したイオマンテ。渾身の一撃を俺に浴びせる寸前であった。 「はっ?ちょ!!」 流石に古代詠唱でシールドを発動する暇さえなかった。 俺は、反射的に腕でイオマンテの拳を受け止めようとしてしまった。 運が良ければ複雑骨折。 運が悪ければ粉。 粉になれば修復までに時間を要してしまう。 だが、 結果は、そのどちらでもなかった。 包帯を撒いていた俺の腕は健在であり、見覚えのある数値が表示された。 『1』 イオマンテの攻撃を受けた際に発生したダメージは、1であった。
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