第32話 後継者と秋山からの依頼

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「なんだ……これは」 包帯を撒いた左腕全体に確かな熱量を感じる。 俺の血と何かが混ざりあうような。 決して気持ちが良いものではない。 ドロドロとした異物が体内から俺の細胞を侵食する感覚が拭いきれない。 だが、俺のライフゲージは健在だ。ダメージ『1』分失ったが、表示上はほぼ変化無し。 「ライさん……平気?!」 「みたいだな」 イオマンテも俺にダメージを与えた手応えを感じていたが、実際俺が受けたダメージ量の少なさに警戒をしていた。 その後、イオマンテの攻撃を何度も受けてみた。 包帯を巻いた左腕で受けた場合のダメージは『1』であり、それ意外の箇所で受けた場合は、通常分のダメージ量を受けたのであった。 また、ソネルに魔法を唱えてもらい、左手で薙ぎ払おうとしたが、弾き返す事も出来ず、ダメージを受けた。 「ライさん、ライフが減ってきたよ……」 「そうだな」 回復魔法を唱えて、自分に施した。 そのとき、耐え難い激痛が全身を襲い、思わず膝まづいてしまった。 「ラ、ライさん?!」 「くっ……もしかして」 確認すると、ライフゲージがごっそり減っていた。 ここで、俺は悟る。 【王族の包帯】を装備した場合、どんな事態をもたらすのかを。 市場に出回っておらず、ズンセックですら初見であった謎の装飾品の真の力を…… 装備した状態で、説明画面を開くと、先程まで記載されていなかった所に文字が新たに追加されていた。 ーーーー 【王族の包帯】 サフランカ地方を統治する王家に伝わる秘伝の包帯。亡き王の身体を永続的に保管するために創られたものであり、物理攻撃を極限まで緩和させる効力を持つ。 回復系と炎系に対し極端に弱くなる。炎系を受けると包帯は焼失し、効力を失う。一定時間を経過すると包帯は復活する。 また、この包帯を装備した場合、腕力、素早さ、魔力が上昇するが、属性はマミーとなる。 ーーーー 属性はマミーとなる。 属性はマミー マミー ……。 これか?!俺の身体に違和感を覚えた訳は!! 確かに、包帯を巻いてある左腕だけ血色が悪く、ゾンビのように色を失っている。 つまり、 白衣を着たミイラ人間がここに完成してしまった瞬間であった。 いやいや、 回復魔法でダメージを受ける治癒師(ヒーラー)だなんて前代未聞だぞ?! これを装備してしまえば、俺自身のライフゲージを回復させる手段が絶たれる事を意味するじゃないか。 ……だが、 魔力数値は極端に向上し、装備した左手では物理攻撃をほぼ無効化できる。 弱点は増えてしまったが、代償として、比類無き強者になれるのも事実。 「ライさん……オーラが」 禍々しい魔力の渦をみたソネル。 「怖いか?」 「うんうん。そうじゃない……新しい旋律を浮かんだ時のような感覚に似てて、心の底からゾクゾクするの……不確定で未知数だから……」 さすが、MMC音楽コンクール歴代1位の最高得点を叩き出したソネルらしい表現だ。
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