第32話 後継者と秋山からの依頼

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「さぁ、続きを……!?ソネルっ!イオマンテをこちらに呼んでくれっ」 「ど、どう……したの?!」 「しっ……気配がする。イオマンテに俺等も含めて認識阻害(ハイディング)スキルで姿を消すように頼んでくれ!!」 まだ試したい事がいろいろあったが、一時中断となった。 どうも、来客のようだ。 「おかしい……この辺りに大きな気が複数集まっていた気がしたんだがな」 声。聞き覚えのない声だ。 さっき俺達が居た辺りに男が現れた。 腕にある大きなタトゥーが印象的な男。 (さっきまで私たちがいた……ところ) (あぁ。俺達を捜しているようだな) やはり見たことがない奴だった。 俺は対象分析する魔法を古代詠唱で発動した。対象者に悟られないよう、認識無効化の術式が編み込まれているから、プレイヤーごときに悟られることはまずない。 生前のファラオぐらいだ。この魔法に気づけるのは。 ーーーー ハーミット(所属ギルト:蒼の一撃) ジョブ:二刀流ゴーレム ーーーー キョロキョロと辺りを見ている奴はハーミットというらしい。 蒼の一撃……何処かでみたような 「大事な戦闘を控えてるのに、寄り道ですか?ロク番隊長」 続いて、他の声も聞こえてきた。 (綺麗な人だね……お姉ちゃんみたい) ソネルはボソリと俺に呟いた。 ハーミットに話しかけているのは、女性ではった。 スタイルは良く、どこか凛とした品がある容姿であった。 まぁ、容姿だなんていくらでも工夫しようと思えば可能だ。それに、『中身は唯のおっさんでしたっ』なんて事は良くある話。 その点、リコはゲームの世界でも、現実世界でも圧倒的な美人だ。西園寺もMMC音楽コンクールで逢ったが、リコとは違う系統の美人。俺より年下って言うんだから恐ろしい話である。 そして、ソネルよ。 ソネルは美人というより、神秘的であり何より比類無き可愛さが他の追随を許さない程。 ハーミットに話しかけている女性には、特に興味がないが、一応調べておくか…… 俺は、古代詠唱により対象分析する魔法を発動しようとした。 「魔力の流れ……誰か、そこにいるの?!」 女性はいきなりこちらの方を見て叫んだ。 (気づかれ……ちゃった?!) (いや、認識阻害率は100%のままだ。物理的な接触がないと、まず気づかれない筈だ) 小さい声でソネルに耳打ちした俺。 イオマンテは、このスキルの使い手であるので、常に息を殺してじっと相手を見ている。 流石、認識阻害(ハイディング)スキル使いのBOSSだ。 だが、あの女性は確実に俺の古代詠唱に反応した様子だった。 「流れを感じたのは……あの辺り」 女性はそう言い、アイテムストレージから取り出したのは、モンスターを仕留める用の使い捨てクナイ。 それをこちらに飛ばしてきた。 (ラ、ライさん……逃げる?闘う?) (いや、ソネル、イオマンテ!『ステイ』だ。俺に任せろ) 俺は今にも動き出そうとするソネルとイオマンテを制止させた。 そして、こちらに飛んできたクナイを左手で軌道を少しだけ変えた。 ダメージは1。 物理的な攻撃で助かったぜ。 「……今、クナイの軌道が少し変わった?いや、でも何も見えないし、魔力の流れも感じなかった……私の思い違い……?」 そう言い、二人はその場から離れた。
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