第32話 後継者と秋山からの依頼

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(2) 「ライ、知ってるか?ミイラ(マミー)は……」 「『リンゴ』しか食べないってか?冗談も程々にしないとお前を喰っちまうぞ?」 包帯の事を話した途端に俺をからかって来やがった。ズンセックの弛いボケに対し、すぐにツッコミを入れた俺。 「速いな。今のも古代詠唱の賜物か?」 「そんなくだらない事に使えば、ファラオが井戸から出てきて呪い殺しにやってくるかもな」 俺の悪い癖だ。 ズンセックと話していると、つい奴のペースに巻き込まれており、知らない間に俺も同じような事を口走ってしまう。 そうならない為に、秘技『スキルキャンセル』でズンセックの妄言を自分自身で止めてもらいたい所だ。 「で、今日は何のようだ、ライ。俺も暇じゃねぇんだ。ライと久しぶりにイベントに出てわかったんだ。俺達『ウィダーガリー』も個々のレベルを上げないと上位のお宝は獲得できねぇってな」 前回のイベントで、スター総獲得数第3位という、華々しい成績を残したにも関わらずウィダーガリーのメンバーは皆喜んではいなかった。 勿論、最高難度を攻略したことは喜んではいたが、それでもファラオのような物理耐性の高い相手に対し苦戦したのが悔しかったのだ、と俺に話してくれた。 「修行の邪魔にならないように手短に聞く。『蒼の一撃』って名前のギルトを知ってるか?」 「あぁ、そんな事かよ。ライからは鋭い質問ばかりくるから身構えたけど、拍子抜けだぜ」 「『そんな事』って何だよ、有名なのか?」 「蒼の一撃。魔法系のジョブを必要とせず、最強の剣士のみで構成されたギルド。 有名も何も、前回のイベントのスター総獲得数第1位だ。知らない方が少ないぜ?……で、何でまた蒼の一撃の事を聞きたかったんだ?」 ズンセックからの返答に対して、俺の中の曖昧な記憶が合致した。 俺自身も何処かで見たことある名前だとは感じていた。確か、アリストテラスを救えのイベント成功者でも蒼の一撃のメンバーの名前が載っていたっけ。 その他にもイベント功績者で名前を無意識のうちに見ていたのだろう。 だが前回のイベントの優勝者だとは知らなかった。 「蒼の一撃のメンバーに女性キャラはいるか?髪はブロンズで、やや長く碧眼。あと魔力を感知できそ「おいおい。俺をおちょくっているのか?!」 俺の話を途中で遮ったズンセック。 「アリス。別名『剣聖のアリス』。一刀流の中で今、最も最強とされている。攻守のバランスは文句無し。弱点も無し。 そして、彼女特有の能力が最強へと押し上げた」 「能力?」 「あぁ。特性と言った方が正しいかもな。彼女は魔法を発動する前の気配を察知できる【魔女狩り】という唯一無二の能力を持っている。 魔法を発動する前に気づかれるんだ。魔法系のプレイヤーはまず彼女に勝てやしない」 なるほどな。 フリーフィールドで出会した際、イオマンテの認識阻害(ハイディング)を完全に見破っていたわけではなかった。 あれば、イオマンテの特技であり、魔法系統ではない。 逆に、俺の対象分析の魔法は完全に見破られていた。 あれは魔法だ。 たが、古代詠唱でも見破ったとなると、アリスというキャラは魔力の流れの段階で気づいていることになる。 ノータイム発動の古代詠唱ですらバレるのか…… アリスは中々の猛者のようだな。
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