第32話 後継者と秋山からの依頼

12/49
前へ
/345ページ
次へ
禁足地に足を踏み入れた瞬間、気配がガラリと変わったのを肌が嫌でも感じてしまった。 まるで、お化け屋敷の室内に入った瞬間のような変わりように似ている。 あれは、リアル世界で体験できる身近な異世界と言っても過言ではない。 先程までの談笑していた雰囲気は消え去り、思い出させてくれた。 ここは、最も危険な『運営の管理外エリア』であることに。 本当であれば、こんな危ないエリアに侵入できないように運営側が細工して当然の話。 だが、実際は今の俺達のように容易に侵入できた。 秋山の話では今回、蒼の一撃がこの禁足地に侵入することを運営側は事前に把握していたらしい。 最強クラスのギルドが、わざわざ禁足地の探索をしてくれる。 運営側からしたら、利の方があると判断したのだろう。黙認という、ある意味では卑怯、違う視点から視れば『最強ギルドにこのゲームの運命を託した』と言えなくもない。 俺が秋山から託された依頼は2つ。 ①蒼の一撃ギルドメンバーの護衛 ②既に禁足地内に侵入し、生存しているプレイヤーがいれば救出 護衛に、救出。 俺らしいと言えば聞こえがいいが、命がけのクエストになりそうなのは間違いない。 さて、 禁足地エリアに侵入して数分が経過。 灰色の雑草に、色を失った倒木が目立つ草原エリアが拡がっていた。 「チェック」 アリスの声に合わせ、蒼の一撃のメンバーの合計8人が各方角を黙視により安全かを確認していた。 統率の取れた見事な連携である。 剣を構えたまま、それぞれが歩きだした。 「クリア」「クリア」「クリア」…… ファブルジョイノに似た軍隊の動きであり、無駄が無かった。 俺達、部外者を集めなくても蒼の一撃のメンバーのみで禁足地の謎に迫れそうな雰囲気だ。 さて、 禁足地にやってきた蒼の一撃のメンバーは合計8人。大規模ギルドであるため、全メンバーが参加するのは難しい。毎回適性と判断されたメンバーが参加するらしい。 (2)番隊長のグデンファーを筆頭に、 (3)番隊長のアリス、 (6)番隊長のハーミット、 (10)番隊長の蝦夷(エゾ) そして、番号は付番されていない、作兵衛(さくべえ)、ズズズ、ライオトップ、見聞録(ケンブンロク)の8人である。 ちなみに、番号は漢数字を採用しているらしい。大規模ギルドらしい拘りだな。 「なんで、番号が付いていないプレイヤーがいるんだ?」 「あんた、何も知らねえで参加したのか?蒼の一撃は総隊長から上位10名は番号が付番される、強ぇ順にな。ただ、番号が無いからって弱いわけじゃねぇ。蒼の一撃じゃなければ、リーダーになれる腕前の人間ばかりさ」 飛び入り参加のおっさんは、俺にそう教えてくれた。
/345ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1041人が本棚に入れています
本棚に追加