第32話 後継者と秋山からの依頼

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その後、 「チェック……」 アリスの声が響き、 「ク、クリア……」「クリア……」「クリア」…… 状況を求められたメンバーは、報告をした。 『異常なし』と。 確認が終わる度にざわつく一同。今いるのは禁足地と呼ばれる曰く付きのエリア。しかも地下3層まで来ている。 いや、正確に言えば、来てしまったのである。 出遇うであろうモンスターと遭遇することなく。 「み、見ろよ!こんな硬い素材で出来た武器見つけてしまったぜ」 見せびらかすように、俺の横で取得した武器を取り出しては構えているのは、飛び入り参加のおっさん。 おっさんは、第2層で偶然にも宝箱を発見した。取り決め上、発見者が所有者となる。 飛び入り参加の他のプレイヤーは、他に宝箱は無いかと血眼になりながら捜している。 (隊長。やはり、他の者は禁足地から出ていただいた方が良いのではないでしょうか) (ん~。アリスも気になるか) 野太い声が応答する。 (えぇ。地下の層に行けば行くほど、気配が色濃く感じます。フリーフィールドやイベントでは感じたことの無い、危ない気配が……) (魔法の気配を察知できる【魔女狩り】を持つアリスがそう言うなら間違いない。恐らく、地下深くに得体の知れない奴が潜んでいるんだろうな。……わかってるな?蒼の一撃が、この禁足地に来た本当の意味を……) (もちろんです、グデンファー隊長。私は命にかえてでも見つけ出します。他のメンバーにお伝え……は?) (……騒ぎになるからな。総長とワシ、アリスしか知らない) (三役案件……ですよね、やっぱり。下の者が聞けば大混乱です) アリスと話している、恰幅のいい髭面のあいつは、グデンファー弐番隊長。蒼の一撃の副総長である。 他の者には気づかれないよう小声で話しているが、残念ながら俺の耳には聞こえた。 どうやら、蒼の一撃がこの地に潜入しているのは、ただの好奇心で来ている様ではなさそうだ。 だが、話からすれば、この場にいるグデンファーとアリスの2人しか知らない事情がどうやらありそうだ。 「お!!何かあるぞ!お宝かも?!」 飛び入り参加している別の男が声をあげた。 全プレイヤーに少し緊張が走る。 俺以外のプレイヤーは念のため武器を構える。 だが、物陰から出てきたのは、 一匹のスライムだった。 やや濃い水色のスライム。 フリーフィールドの全域にいる初期モンスターだ。 「ス?!あははははは」 緊張の糸が切れた男は笑い始めた。 「何が禁足地だよ!3層まで来て、初めて出逢ったモンスターが、ただのスライム?!笑わせやがって!俺は、あいつみたいにお宝が欲しいのさ!!」 「ちょっと、あなた!!無闇に攻撃はやめなさ」 アリスは、男の攻撃を止めさせようと声をかけようとしたが、攻撃のモーションに入っていた男は、躊躇いもせず、スライムを斬った。
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