第32話 後継者と秋山からの依頼

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刃物の実演販売のように、スパんと真っ二つに斬れたスライムはゆっくりと地面にぽたりと落ちた。 憂さ晴らしも兼ねていたのだろう。斬りつけたスライムの最期を確認することもなく、背を向けた男。 「脅かしやがって」 そう呟き歩き始めた。 その行為は別におかしい事ではない。格下のモンスターに対して、細心の注意を張る必要はない。 だが、ここは禁足地。 秋山の情報では、禁足地内でライフゲージを失うと、修得したスキルの喪失やアカウントの喪失する被害が確認されている。 で、あるならば、 ここはフリーフィールドとは違い、それ以上の注意を払うべき。 だが男は、事もあろうか『いつもどおり』をした。 後悔するとすれば、 やり直せるのであれば、 無闇に斬りつけたところだったのかもしれない。 「あれ……」 男は違和感を感じた。 先ほどまで感じていた剣の重さを感じないようになったからだ。 追いかけるようにアリスが叫ぶ。 「あなた!腕!!」 「え……?!腕?」 男はゆっくりと右手を確認した。 すると、あるはずの腕は消えており、やや目線を下げた先に自分の腕が剣を握りしめたまま転がっていたのだ。 「お、俺……」 彼が最期に言った言葉としては、あまりにも可哀想な内容であった。 ライフゲージも完全に色を忘れており、硬直した瞳だけを残したまま、彼は動かぬ死体となり横たわった。 「構え!!」 アリスの号令により蒼の一撃のメンバー全員が剣を構えた。 併せて表示される文字 【号令】により攻撃力が15%増加しました つられて、他の参加者も構えようとしていた。 斬ったはずのスライムは、真っ二つに別れてはいたが、まだ揺れながらこちらにゆっくりと近づいている。 ライは、意識のない男の元に駆け寄り、脈を測ったが、既に手遅れだと悟り、アイテムを締まった。 「酷いな。それに腕は……刃物のような斬り口……?き、気をつけろ!そのスライム、斬撃を使って殺している。もしかしたら、攻撃を跳ね返す、もしくは、受けた攻撃を真似して攻撃してくるかもしれないぞ!!」
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