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だが、ライの忠告に耳を貸す者は誰一人いなかった。『モンスターが現れ、一人殺された』という事実のみを知るや否や、皆眼の色を変えていたからだ。
『俺は殺されたくない』
闘える者だからこそ、そう思うのかもしれない。
相手はスライム。
隙を見せなければ、敗けはしないだろう。
そんな、傲りに似た場の空気が逆に冷静さを欠かせる結果となっている。
他の者も、突然現れたスライムに対し攻撃を仕掛けた。が、攻撃に力を籠めすぎるあまり、ガードが遅れた者はスライムからの斬撃に対処できずにいた。
「ちっ。後先考えてられねぇ」
ライはそういい、動こうとしたが、それを阻止した者がいた。
「何しようとしてるの?」
アリスだった。
「いや……」
「あなたは武器すらないのよ?まさか、本当に英雄ごっこでもするつもりなの?ここは私に任せなさい」
ライの手をひきアリスは護ろうとしている。
「グデンファー隊長、お願いします!!」
「うむ」
短い返事のあと、グデンファーはスライムに向かって構えた。
彼が取り出したのは、他の者が扱う剣とはオーラが違っていた。妖気に似た独特のオーラからは、身震いするような異質さを感じる。
スライムはグデンファーに飛びかかろうとした。そこまでは姿を見せていたが、グデンファーまであと1mくらいの距離まで近づいた瞬間、跡形もなく消え去った。
「は、速い……」
ライの素直な感想は言葉として生まれた。
「もちろんよ。彼の抜刀技術で右に出る者はいないわ」
このゲームは、キャラクターの成長に敏感である。敏感であるがゆえに、衰えにも敏感であるのだ。
ゲーム内で活動しない時間が増えれば、それだけ筋力や体力ゲージも減少する。逆に、鍛えれば鍛えるほど増える。
他のゲームであれば、レベルは下がらない。
勿論、このゲームもレベルは下がらない。
だが、筋力や体力、それに技術の切れ味は劣る為、トップで君臨し続けるのは努力も必要である。
グデンファーはこのゲームが始まってからずっと剣技で頂点に君臨し続けている。誰よりもこのゲームに時間を費やし、誰よりも技術に研きをかけてきた。
「爺さんなのに、衰えを感じさせないな」
「えぇ。常に自分を越える事に貪欲な方です。技術で言えば総隊長に並びます」
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