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「いいじゃないか、アリス君。禁足地に足を踏み入れている時点で皆、正気ではないぞ」
はははと笑いながら近寄ってきたグデンファー。余裕のある笑みを浮かべているが、薄い蒼に染まった瞳は全く動じている様子はなかった。
常に戦闘を意識し、戦場に実を捧げているかのような冷たい眼光がとても印象的だ。
そして、
少し近づかれただけで感じる圧が、グデンファー自身の強さを物語っていた。
覇者の風格は、ファラオに通じるモノさえ感じてしまうほど。
いちプレイヤーが醸し出せるオーラではない。
「若い白衣の者よ。まだ名を聞いていなかったな?ワシは、グ」
「俺は『徳永』だ。グデンファー弐番隊長さんよ」
俺の返答にも眉1つ動かさず、じっと様子を窺ってくる。
「……では、Dr.徳永。君が本当に我々を邪魔せず、このまま同行を続けてくれるのであれば、ワシは嬉しいのだが、構わないか?」
予想だにしない、グデンファーからのお誘いだった。
勢いが押さえきれず、悪目立ちしてしまったと思い、このまま同行が困難になったかもと一瞬ヒヤリとしたが、どうやらグデンファーは俺の事を深く詮索せずにこのまま進もうとしてくれている。
「同行しても……構わないのか?」
「Dr.徳永。君の真意はわからないが、我々がこれまで経験した旅とは違う旅を君は経験しているようだ。『スライムの知識』が君の真髄では無いことくらいワシにはわかる。君を……利用させて貰っても構わないのか?」
グデンファーめ。
こいつ、何か見透かしている気がしてならねぇ。
流石、最強ギルドのナンバー2と言ったところか。
俺は「あぁ生きてる間、よろしくな」とだけ返した。
グデンファーのもとに寄るアリス。
(よろしいのですか?)
(何がだ、アリス君)
(グデンファー隊長の先ほどお言葉……彼は危険な存在なのですか?)
(いや、まだわからない。だが、彼からは何か『異物』を感じる)
(異物……ですか?)
(うむ。上手くは表現できぬが、彼からは唯一神のような、特別な力を感じる……禁足地には得体の知れない化物が多くいるだろう。彼のような力が我々側にいてくれるのも悪くないだろう。して、彼のジョブは何と言っていたのか?)
(彼は『バックパッカー』だと言ったそうです)
(運び屋か。確かに武装系のジョブではないようだ。だが、非武装であそこまで雄々しくいられる彼は雑用要員では無さそうだ……彼を頼る時が来るかもしれないな……)
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