第32話 後継者と秋山からの依頼

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「いいじゃないか、アリス君。禁足地(ここ)に足を踏み入れている時点で皆、正気ではないぞ」 はははと笑いながら近寄ってきたグデンファー。余裕のある笑みを浮かべているが、薄い蒼に染まった瞳は全く動じている様子はなかった。 常に戦闘を意識し、戦場に実を捧げているかのような冷たい眼光がとても印象的だ。 そして、 少し近づかれただけで感じる圧が、グデンファー自身の強さを物語っていた。 覇者の風格は、ファラオに通じるモノさえ感じてしまうほど。 いちプレイヤーが醸し出せるオーラではない。 「若い白衣の者よ。まだ名を聞いていなかったな?ワシは、グ」 「俺は『徳永』だ。グデンファー弐番隊長さんよ」 俺の返答にも眉1つ動かさず、じっと様子を窺ってくる。 「……では、Dr.徳永。君が本当に我々を邪魔せず、このまま同行を続けてくれるのであれば、ワシは嬉しいのだが、構わないか?」 予想だにしない、グデンファーからのお誘いだった。 勢いが押さえきれず、悪目立ちしてしまったと思い、このまま同行が困難になったかもと一瞬ヒヤリとしたが、どうやらグデンファーは俺の事を深く詮索せずにこのまま進もうとしてくれている。 「同行しても……構わないのか?」 「Dr.徳永。君の真意はわからないが、我々がこれまで経験した旅とは違う旅を君は経験しているようだ。『スライムの知識』が君の真髄では無いことくらいワシにはわかる。君を……利用させて貰っても構わないのか?」 グデンファーめ。 こいつ、何か見透かしている気がしてならねぇ。 流石、最強ギルドのナンバー2と言ったところか。 俺は「あぁ生きてる間、よろしくな」とだけ返した。 グデンファーのもとに寄るアリス。 (よろしいのですか?) (何がだ、アリス君) (グデンファー隊長の先ほどお言葉……彼は危険な存在なのですか?) (いや、まだわからない。だが、彼からは何か『異物』を感じる) (異物……ですか?) (うむ。上手くは表現できぬが、彼からは唯一神のような、特別な力を感じる……禁足地には得体の知れない化物が多くいるだろう。彼のような力が我々側にいてくれるのも悪くないだろう。して、彼のジョブは何と言っていたのか?) (彼は『バックパッカー』だと言ったそうです) (運び屋(バッグパッカー)か。確かに武装系のジョブではないようだ。だが、非武装であそこまで雄々しくいられる彼は雑用要員(フティリティー)では無さそうだ……彼を頼る時が来るかもしれないな……)
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