第32話 後継者と秋山からの依頼

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(5) 「お前は何、手に入った?」 「武器が2つ。どちらも入手困難の激レアアイテムだぜ。そういうあんたも、珍しい防具手に入れてるじゃないか」 「ドラゴンメイル。ブレス系のダメージを半減させる一級品だ」 「ところで、俺達ってどこまで深く潜った?」 「さぁな。地下8層くらいか」 手に入れた物を見せびらかしている参加者たち。いつのまにか、ここが危険地帯だという認識は薄れ、宝探し感覚に陥っているのか、大きな声を出しながら潜入した。 さすがに、危機意識の無さに蒼の一撃のメンバーからも不満の色が見え始め出した。 『あんな奴等と別行動をした方がいいのでは』と。 潜入に対する不協和音が生じ始めたとき、 事は起きてしまった。 「うぉおお!」 声がした。 声は蒼の一撃のメンバーの1人。見聞録(ケンブンロク)であた。 「な、なんだこれは……」 見聞録(ケンブンロク)が見つけたのは、宝箱。だが、普通の宝箱とは違っていた。 このゲームの宝箱は赤色の布生地をベースに金の縁取と随所に散りばめられた宝石が輝く入れ物だ。 見つけた瞬間に、心は踊り、たとえ中身が回復薬のみだったとしても、どこか許せてしまう。 だが、今回はそれ以上だった。 重厚感を感じさせる紺色の布地をベースに、あしらわれた宝石も希少価値のあるモノばかりであり、一目で他の宝箱とは違うオーラを漂わせていた。 「おっ!!すげぇ宝箱あるじゃないか!」 見聞録(ケンブンロク)の声で集まってきた飛び入り参加者がやってきた。 「あんた、見つけたのに開けない……のか?」 「あぁ。アリス隊長からの指示なく無闇に行動はしない。特に、この宝箱は他とは違う気配もする」 「あぁ、そうかい。じゃあ」 男は見聞録(ケンブンロク)の言葉を聞くなり、宝箱を開けようとした。 「お、お前!!勝手に何を!!既に死者も出ている!これ以上勝手な行動はやめろ」 「馬鹿言え。宝箱は開ける為にある。それにスライムごときにやられたのは、奴等が弱かったからだ」 そう吐き捨て、高揚感を押さえられない男は、制止を振り切り宝箱を開けた。 「剣か、それとも盾か……!!」 蓋を開けても中が見えず、手を中に入れた瞬間、 宝箱の蓋が勢い良く閉まった。 「い゛!!」 言葉にならない痛みが男を襲う。挟まった腕を引き抜こうと、閉まった蓋を開けようとしたが、全く動かない。 焦る男。 「ど、どうしたの?!」 アリスと、ライが到着した頃には男は錯乱しており、とても会話できる状態ではなかった。 「アリス隊長!!この男が宝箱に噛みつかれてしまいました!」 「罠型の宝箱だったのね?!」 他のプレイヤーも集まったとき、 プレイヤーを襲った宝箱から霧のような白い物質を噴射し始めた。 「この、宝箱!!噛みついただけでなく、まだ何かしようとしている!」 トラップ型の宝箱が何をしようとしているのか、誰も判らずにいた。 ただ、一人。 ライを除いて。 「この宝箱からはモンスターの気配は感じないが……その白い煙みたいなガスから誘引性のようなモノを感じる」 「ゆ、誘引?!いったい、誰を呼ぶって言うの?!もしかして……」 アリスの言葉にライは続けた。 「もし、俺達が招かざる客だとすれば、答えは1つ。禁足地に住むモンスターか何かが寄ってくる。俺達を殺しに……な」
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