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「お前は何、手に入った?」
「武器が2つ。どちらも入手困難の激レアアイテムだぜ。そういうあんたも、珍しい防具手に入れてるじゃないか」
「ドラゴンメイル。ブレス系のダメージを半減させる一級品だ」
「ところで、俺達ってどこまで深く潜った?」
「さぁな。地下8層くらいか」
手に入れた物を見せびらかしている参加者たち。いつのまにか、ここが危険地帯だという認識は薄れ、宝探し感覚に陥っているのか、大きな声を出しながら潜入した。
さすがに、危機意識の無さに蒼の一撃のメンバーからも不満の色が見え始め出した。
『あんな奴等と別行動をした方がいいのでは』と。
潜入に対する不協和音が生じ始めたとき、
事は起きてしまった。
「うぉおお!」
声がした。
声は蒼の一撃のメンバーの1人。見聞録であた。
「な、なんだこれは……」
見聞録が見つけたのは、宝箱。だが、普通の宝箱とは違っていた。
このゲームの宝箱は赤色の布生地をベースに金の縁取と随所に散りばめられた宝石が輝く入れ物だ。
見つけた瞬間に、心は踊り、たとえ中身が回復薬のみだったとしても、どこか許せてしまう。
だが、今回はそれ以上だった。
重厚感を感じさせる紺色の布地をベースに、あしらわれた宝石も希少価値のあるモノばかりであり、一目で他の宝箱とは違うオーラを漂わせていた。
「おっ!!すげぇ宝箱あるじゃないか!」
見聞録の声で集まってきた飛び入り参加者がやってきた。
「あんた、見つけたのに開けない……のか?」
「あぁ。アリス隊長からの指示なく無闇に行動はしない。特に、この宝箱は他とは違う気配もする」
「あぁ、そうかい。じゃあ」
男は見聞録の言葉を聞くなり、宝箱を開けようとした。
「お、お前!!勝手に何を!!既に死者も出ている!これ以上勝手な行動はやめろ」
「馬鹿言え。宝箱は開ける為にある。それにスライムごときにやられたのは、奴等が弱かったからだ」
そう吐き捨て、高揚感を押さえられない男は、制止を振り切り宝箱を開けた。
「剣か、それとも盾か……!!」
蓋を開けても中が見えず、手を中に入れた瞬間、
宝箱の蓋が勢い良く閉まった。
「い゛!!」
言葉にならない痛みが男を襲う。挟まった腕を引き抜こうと、閉まった蓋を開けようとしたが、全く動かない。
焦る男。
「ど、どうしたの?!」
アリスと、ライが到着した頃には男は錯乱しており、とても会話できる状態ではなかった。
「アリス隊長!!この男が宝箱に噛みつかれてしまいました!」
「罠型の宝箱だったのね?!」
他のプレイヤーも集まったとき、
プレイヤーを襲った宝箱から霧のような白い物質を噴射し始めた。
「この、宝箱!!噛みついただけでなく、まだ何かしようとしている!」
トラップ型の宝箱が何をしようとしているのか、誰も判らずにいた。
ただ、一人。
ライを除いて。
「この宝箱からはモンスターの気配は感じないが……その白い煙みたいなガスから誘引性のようなモノを感じる」
「ゆ、誘引?!いったい、誰を呼ぶって言うの?!もしかして……」
アリスの言葉にライは続けた。
「もし、俺達が招かざる客だとすれば、答えは1つ。禁足地に住むモンスターか何かが寄ってくる。俺達を殺しに……な」
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