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「だとしても、迎え撃つだけだわ」
震えることなく、躊躇せず言いきったアリス。流石、巨大ギルドを率いる者らしい堂々たる振る舞いだ。
だが、それだけではまだ浅い。
状況次第では、気合いや気持ち、それに感情なんてものは、現実を直視せずただ願望を誇張しただけの絵空事に過ぎない事も多々ある。
今必要なのは『把握』
知ること。
とくに、今俺達が置かれている状況、それに俺達にはどんな選択肢が残っているかを。
「敵が来るとして、闘いたいのであれば勝手にしたらいい。だが、その選択肢を今決断するのは間違いだ」
俺はそう言い、蒼の一撃のメンバー、それに飛び入り参加でまだ生きている者に対し、隠れるように指示した。
特に、身を屈める、もしくは匍匐前進するかのように寝そべる事ができる者は、極力そうするように命令した。
「は?なぜ貴様の指示を……」
「はい、黙ってまずはやってみろよ」
体術で無理やり地面にねじ伏せた俺。
「痛ぇ!何しやがる」
「ほら、お前には何が見える?」
「何が……だよ」
「あんたの数値さ。認識阻害率は?」
「は?認識阻害……そんなもの40くら……」
ハーミットは数値を見て驚きの表情を見せた。
数値が85%まで上がっていたからだ。
「し、信じられない……」
「あんたらは、今まで闇雲に闘いばかりをしてきたのか?俺はあんたらとは違って、非力ジョブだ。闘う以外に専念してここまで行き長らえてきた。何も『闘う』だけが全てではないぞ」
「非力だと言い張るわりには、眼が死んでないのう。では問おう、Dr.徳永。君にはその眼で何が見える?」
グデンファーからの問い。
「言ったろ?状況も把握せず、『戦闘』のコマンドを選択するにはまだ早いと。まずは禁足地を知ること。情報が少ない方が負ける。これはどんな闘いにおいても必然だ。
宝箱で誘引されて来る者が何者かを確認することが重要だ。その為に、まずは認識阻害率を高め、隠れながら状況を知ろうってわけさ」
「で、でも、宝箱に噛みつかれた彼をそのままにすれば、いづれ気づかれるわ!!それなら、はじめから戦闘の隊型を整えて、攻撃性を高めるべきだわ」
「『勝てる』保証があるなら……な。アリス達は、いつも勝てる相手としか闘ったことないのか?」
俺はアリスにそう言い、離れようとした。
「な、何をするつもりなの?!」
「何って、噛みつかれて動けないあいつを助けに決まってるだろ?」
宝箱に近づく俺。
「あ、あんた…俺を助けてくれるのか?!」
「あぁ、おとなしくしろ」
俺は宝箱に手をかける。
「悪いが、非力ジョブのあんたには、無理だ。力自慢の俺でも、全く抜けない。すまないが俺の腕を切り落としてくれないか?」
「切り落とす……ねぇ。現実世界でも同じこと言えるか?」
俺は、少し意地悪な質問をした。だが、宝箱に挟まれた男の覚悟は本物のようだ。
「冗談さ……ほらよ」
俺は、宝箱を無理やり開けた。
「あ、開けた……だと?」
驚かれる中、俺は開けることに成功した。
勿論、開けられると確信していた。
俺の左手に巻かれた包帯は普通の包帯ではない。
王族の包帯
物理ダメージを1にするだけではなく、魔力も上げ、さらに腕力もイオマンテ級。
「宝箱1つくらい開けられるさ、俺は非力だからな」
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