第32話 後継者と秋山からの依頼

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俺と助けた男は息を殺して潜む。 物音を立てぬよう、細心の注意は忘れない。 認識阻害率が100%でなくても案外気づかれないものである。 潜むことに徹すれば気配は消せ、察知されることなく場をやり過ごせる。 恐怖。怯え。不安。 負の感情に支配されることさえ恐れなければ、まだ生きる道はある。 このまま…… このまま、何事もなく過ぎればいいと願った。 しかし、奴がこの場を去ろうとした瞬間、 血の気の多い人間が1人立ち上がっていた。 持っている剣を握りしめ、無防備な背中を目指す。 「くたばれぇ!!」 独り、攻撃するという選択肢をとってしまった彼は蒼の一撃ではない。 だが、奴の剣技を見る限り、蒼の一撃からスカウトされても不思議ではない程の腕前だった。 彼の技量をもってすれば、相手の隙を狙い攻撃に転じたいと思うのも無理はない。 現れたヒト型の背後を完璧に取っていた。防ぐことも、回避することも出来ないタイミング。 このままクリティカルヒットであれば、倒せるかもしれない。 潜みながら見ていた者の中で、そう思った者も少なからずいたに違いない。 「やはり隠れていたか」 背後を確認することなく、呟いたヒト型。 奴は背を向けてたまま呟いた。 そして、程なくして、 男は首を()がれた。 他の者も相手の様子次第では加勢しようとしていたが、あっさりと殺られた事に対して動揺を隠せず、そのまま身を伏せていた。 「……。どうやら、餌の一匹だけのようだな」 飛び出し、そして命を取られた者だけが、認識阻害率が極端に減少した。それ以外の俺達は、微動だにせず伏せていた為、気づかれるまでには至らなかった。 (あ、あいつは何なんだ……) 怯えたまま、頭を抱える患者 。 俺は、古代詠唱を詠唱し奴の情報を盗んだ。 魔方陣を出現させることなく、奴に気づかれることない。 種族はデーモン。素早さ攻撃力ともに平均なプレイヤーと同等であった。 しかし、この数値は信じがたい。 この数値ぐらいであれば、先ほどのプレイヤーが命を落とすこともなかった。 だが、あのデーモンは襲撃に対し反応した。 もし、空間把握能力が長けているのであれば、初めの段階から俺達が伏せていることも気づくはず。
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