第32話 後継者と秋山からの依頼

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(6) 「俺を裏切りやがって!!だ、誰か助けてくれ」 がなる俺の姿は必死そのもの。醜態を晒し続けては助けを請う。しかし、声に応える者は周りにいない。 罠つきの宝箱に腕を挟まれた状態の俺独りがポツンと存在しているだけ。 しかし、暫くして、応える者が現れた。 「おやおや、また餌がかかっているではありませんか」 落ち着いた口調で現れた。血だらけの汚れた口元をみるに、人間(エサ)を食べていたのだろう。 「まさか、もう一匹餌がいたとは」 俺をみるに、嬉しそうに歩み寄ってきた。 「いや、俺の他に3人いたが、逃げ出したんだ!」 「ほぅ。仲間の情報を売るとは」 「あぁ。だから助けてくれよ!!喰わないでくれ」 嘆願する俺。デーモンは焦る姿をみて嬉しそうに笑う。 「いいですね、恐怖に素直な餌は味が格別なんですよ?」 「お、俺も喰うのか?あんたは何者なんだ?!」 「……いいでしょう。冥土の土産くらい少しお渡しするのも一興かと。私を含め、デーモンはこのバグ(ノイズ)に棲む生き物とでも言っておきましょうか」 「バグ(ノイズ)?」 「えぇ。他者を蝕む為だけに存在します。世界を替えては蝕み、滅べば他の世界に侵入し蝕む。さて、おやすみ前の絵本はこれで終わりとしましょうか?」 デーモンは勢いよく腕を振り抜いた。狙いは首。 「では、おやすみなさい」 だが、俺の首は飛ぶことはなく、ダメージ表示だけが怪しく光る。 【ダメージ1】 「なっ!!」 その段階で既に決着はついていた。 武器を持つ他の戦士達はデーモンの背中を突き刺していた。 聞くに耐えない声をあげながら消滅するデーモン。 「勝ったの?」 アリスはまだ警戒しながら俺に問う。 「あぁ。みんなご苦労さん。俺だけじゃ敵は倒せないからな」 そう言い、俺はまた宝箱を自らこじ開けて挟まれた腕を引き戻した。 「あなた……なんともないの?」 「安心しろ、俺は生きてるぞ?」 「違う!そんな事を聞いてるんじゃないの!自ら囮になってデーモンが攻撃したタイミングで倒せ、っていうあなたの作戦馬鹿げていたわ!」 「ん?みんな生きてるぞ?」 「どうして、首を狙われて平然としていられたの?死ねば助からないかもしれないのよ?」 「安心しろ、アリス。人間(ヒト)は首を飛ばせば確実に黙らせることができる生き物だとやつ(デーモン)は知っていた。だから、奴が首以外を狙う確率は低い。勿論、死なないように保険もかけていたさ」 そう言い、首に巻いていた包帯を外し腕に巻き直した。 「それがあなたの戦い方なの?」 「あぁ、そうだ。俺は武器を持たない。負けない布石の為なら危険に飛び込む。勝つとはそういうものだ」
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