第32話 後継者と秋山からの依頼

26/49
前へ
/345ページ
次へ
「この状況ではさすがに……」 「あぁ、アリス君。君の思う通りだ。皆に伝えてあげなさい……彼が作った道だ」 グデンファーは優しくアリスに促した。アリスは頷くと、凛々しさを取り戻し、周りにいる者達に話し始めた。 「皆さん、彼のいう通り、秘密のまま禁足地に同行させたこと、まずは深くお詫び申し上げます」 アリスは深々と頭を下げた。蒼の一撃の参番隊長である剣聖のアリスが頭を下げているのだ。 この状況下で許さない者は誰も現れなかった。 「包み隠さず伝えます。……実は、我が蒼の一撃のメンバーである、ゼーフィアを追って、現在総隊長が先にこの禁足地に潜りこんでいます」 アリスの話ではこうだった。 ある日、(4)番隊長であるゼーフィアの姿が忽然と消えたのだった。 不審に思った蒼の一撃のトップである総隊長が、諜報活動をしていたらしい。 だが、総隊長が獲た情報は、思いの外、良くはなく、トップ3であるグデンファーとアリスだけにだけ伝えたのだ。 「ゼーフィアさんの行方がわからないなら、俺たちにも言ってくれたら良かったのに……」 残念がるメンバーではあったが、アリスは「ありがとう」と優しく頷いた。だが、顔はまだ険しさを少し残したまま。 「アリス。あんたらの代表がこの禁足地にいるのか?独りか?」 「えぇ。総隊長は単独で潜入しています」 「大丈夫……なのか?」 俺の質問に対して、周りのメンバーは皆『やれやれ』といった表情で呆れている様子だった。 「運び屋、あんた本当に何も知らないんだな、剣聖やグデンファーさんに対しての口調もそうだし、蒼の一撃について何も知らないんだな。喉を差し出す闘い方も新参者(ヌーブ)のように型にはまってねーし」 「悪いかよ?」 「いや……悪くねぇさ。むしろあんた見たいな馬鹿は好きだね。そんなあんたに教えてやる。蒼の一撃の総隊長『ハバ』はこの世界で一番強い剣士だ。それは間違いない」 一番強い? 剣士言っても、一刀流からリコのような双剣使いや、それ以上の剣を扱うジョブも存在する。 派生している種類はジャンル内でも一番多いだろう。それにも関わらず、一番強いだと? 何故言いきれるのか? 「嘘……だとでも言いたそうな目だな?」 また笑われている。だが、にわかには信じ難いのも事実。 「その者のいう通り『ハバ』は強い。ワシよりもな」 グデンファーが口を挟んだ。 「あんたも相当腕が立ちそうだけどな。あんたも単独で禁足地に潜入できそうだけどな」 「ははは。何を言う。魔法使いのいない現メンバーで、運び屋(バックパッカー)ほど心強い者はいない。……さて、本題を話すとするかな」 グデンファーの笑みが消えた。 「ワシ等が今いる禁足地……調べでは、極めて人工的な空間である事がわかっておる……」 「だ、誰かが意図的に作ったってことか?」 「左様、Dr.徳永。ハバの調べで、この地の創造に大きく関わっている人物として、ある1人の名があがった……」 「まさか……」 グデンファーはゆっくりと言葉にした。 『蒼の一撃』(4)番隊長であるゼーフィアの名を。
/345ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1041人が本棚に入れています
本棚に追加