第32話 後継者と秋山からの依頼

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(7) このゲーム内に突如現れた謎の区域『禁足地』。他のフィールドとは違い、このフィールド内でライフを失った者のアカウントに損傷、もしくはアカウント喪失するという規格外のデスペナルティが存在している。 故に、他のプレイヤーは近寄りもせずにいた。 ゲームの運営側も手出しが出来ずにいる、まさに異なる世界。 そんな場所の探索をしているのは、最強ギルドの一角『蒼の一撃』 彼等がこの場所を探索することをかって出たのも裏があったのだ。 【ギルドメンバーが、禁足地と関わりがあるかもしれない】 そうなれば、巨大ギルドとはいえ、内密で動きたいと思うのもわからなくはない。 だが、グデンファーは教えてくれたのだ。 「なるほどなぁ……こいつは、えれぇ任務に荷担しちまっていたようだな」 頭をかく仕草を見せた飛び入りの参加者。だが、表情はというと曇ってはいなかった。 「戻りたいのであれば、入口までご同行させていただきますが」 アリスは帰還の申し出を促したが、飛び入りの参加者は手を突きだし拒んだ。 「いや……そいつは要らぬ心配ですぜ、剣聖のアリスさんよ。最強ギルドが抱える超極秘任務に参加できるなんて、俺みたいな破落戸(ごろつき)が今後同じような経験ができるなんて到底思えねぇ……俺は拒まれても、着いていくぞ?文句ねぇよな?」 参加者は不安がるどころか、むしろ活気が戻っていた。 アリスとグデンファーは周りの雰囲気を視てホッと胸を撫で下ろし、先に進む道を選んだ。 その後、何匹もレッサーデーモンと遭遇した。 「またですか……」 アリスはそう言うと、剣を握り直し果敢にも独りで立ち向かった。 レッサーデーモンも戦闘態勢に入り、アリスの命を奪おうと試みるが、寸前のところでヒラリとかわした勢いですれ違いざまに斬り落としていた。 「ほぅ、あれがアリスの闘いか」 「そうさ、運び屋の旦那。彼女は一刀流のなかで最強のプレイヤーだ」 「あぁ、知ってる。確か、魔法を発動する前の気配を察知できる【魔女狩り】の能力を持っているんだろ?」 ズンセックから仕入れた情報をそのまま言ってるだけだけどな。 「もちろん【魔女狩り】もすげぇ。だが、それだけじゃ勝てねぇ。剣に愛されたプレイヤー、それがアリスさ」 「ん?『剣に愛された』ってどういう意味だよ?」 「観ればわかる、ほら」 隠れていたレッサーデーモンがアリスに対して襲いかかっていった。 アリスは別のレッサーデーモンを仕留めるのに気を取られており、完全に背後を取られる形となっていた。 が、 アリスは背後を確認せずとも、敵の攻撃を握りしめた剣で捌いていた。 その瞬間、攻撃してきたレッサーデーモンはバラバラに斬り刻まれ肉塊となっていた。 「は?何だ今の……ノールックで背後から来た攻撃を剣で受けとめたかと思えば、モンスターが死んだぞ?!」 「そう。アリスの意志とは関係なく、剣が彼女を護ったのだ。オリジナルスキル【守剣神の加護】の効果により、剣がある限り彼女に攻撃は通用しない。必ず護ってくれるのだ。そして、敵の攻撃を受け止めた瞬間、0距離からのオリジナルカウンター剣技で仕留める。それが彼女のプレイスタイルであり最強だと言われる由縁でもある」 剣がアリスを護る? にわかには信じ難いが、それが本当なら俺の装備している【王族の包帯】よりも優れているかもしれない。
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