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「これじゃ……キリがないわね」
「うむ……疲労は極力抑えたいがのぅ……」
グデンファーも武器を携え、出現したデーモンを斬り刻んでいた。
副総隊長であるグデンファー、最強の一刀流で剣の加護により鉄壁のカウンター姫アリスを筆頭に、あらゆるモンスターを総狩りする様は圧巻だった。
また、他の蒼の一撃のメンバーに、飛び入り参加者も高レベルの技で後に続いていた。
死ねば全てを失いかねない危険な場ではあるが、それでもここまでダメージディーラーがいるパーティーほど安心感がある状況も他にないだろう。
お互いがお互いをカバーし合い、禁足地の奥を目指している。
目的は、肆番隊長であるゼーフィアの確認と、先に潜り込んでいる総隊長ハバとの合流。
気がつけば雰囲気は最上階に比べ変わっており、赤黒い草木が何かを知らせているかのように不気味であった。
闇は恐怖をもたらし、微かに聞こえてくる、啜り泣きをしたようなノイズが嫌に耳につく。
ここは何処なのだろうか。
裂けたぬいぐるみがあちこちに散らばっている。中から綿が溢れだすように剥き出しており、一部が焦げていた。
一同は歩みを止め構える。
「アリス君」
「わかっています……」
この感情はどう表現していいかいつもわからなくなる。
BOSS部屋に入る直前の心情というのは。
死を覚悟し、前へ一歩進むだけの事なのに、その一歩がなかなか出ない。
それを目指してストーリーを進めてきた筈なのに。
いざ、目前という時に心を統一する必要がある。
恐れ、迷い、懸念。
負の感情とそれぞれ向かい合うことで、脚を前へと進める動力となる。
そして、
今回は、いつものBOSS部屋前の状況とはやや違う。
今いるのは、禁足地の地下11層のフィールド内であり、BOSS部屋にたどり着いたわけではない。
だが、向こう側から感じる気配は、今まで遭遇したレッサーデーモンとは比べ物にならないほど。
「なぁ、あんた等が探しているメンバー……って事はないのか?」
「いぇ……残念ながら違う」
アリスは即答した。
「なら、話しは簡単だ。徘徊型のBOSS……かもな」
俺はボソリと呟く。
立ち止まり武器を構える俺たちとは対照的に、向こうから小さな影がゆっくりとやってきた。
「どうして……どうしてなの……」
啜り泣き、わずかな言葉を発している。どうやら人型のようだ。女の子だろうか。小さな紅いワンピースだけを着ており、素足のまま。
「いや、そもそも『モンスター』と決めつけるのは早いのかもしれない」
「待ちなさい」
「大丈夫ですよ、もしかしたらゼーフィアさんや総隊長の事何か知っているかもしれませんよ?」
そう言い、アリスの忠告を無視し、近づいた一刀流侍型の作兵衛。
「どうしたんだい、君独りかい?」
「そう……いつも独りになるの」
泣きながら答える少女。
「泣いちゃだめだよ、ほら泣き止んで?ねぇ?」
「無理なの……私を壊してくれる人がいないからみんな真っ黒になっちゃう……」
「えっ?壊す?」
泣いている少女の周りに、魔法陣が突如として出現。その瞬間、作兵衛の足元から黒い火柱が出現し、全身を一瞬にして焼いてしまった。
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