第32話 後継者と秋山からの依頼

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「これじゃ……キリがないわね」 「うむ……疲労は極力抑えたいがのぅ……」 グデンファーも武器を携え、出現したデーモンを斬り刻んでいた。 副総隊長であるグデンファー、最強の一刀流で剣の加護により鉄壁のカウンター姫アリスを筆頭に、あらゆるモンスターを総狩りする様は圧巻だった。 また、他の蒼の一撃のメンバーに、飛び入り参加者も高レベルの技で後に続いていた。 死ねば全てを失いかねない危険な場ではあるが、それでもここまでダメージディーラーがいるパーティーほど安心感がある状況も他にないだろう。 お互いがお互いをカバーし合い、禁足地の奥を目指している。 目的は、(4)番隊長であるゼーフィアの確認と、先に潜り込んでいる総隊長ハバとの合流。 気がつけば雰囲気は最上階に比べ変わっており、赤黒い草木が何かを知らせているかのように不気味であった。 闇は恐怖をもたらし、微かに聞こえてくる、啜り泣きをしたようなノイズが嫌に耳につく。 ここは何処なのだろうか。 裂けたぬいぐるみがあちこちに散らばっている。中から綿が溢れだすように剥き出しており、一部が焦げていた。 一同は歩みを止め構える。 「アリス君」 「わかっています……」 この感情はどう表現していいかいつもわからなくなる。 BOSS部屋に入る直前の心情というのは。 死を覚悟し、前へ一歩進むだけの事なのに、その一歩がなかなか出ない。 それ(BOSS)を目指してストーリーを進めてきた筈なのに。 いざ、目前という時に心を統一する必要がある。 恐れ、迷い、懸念。 負の感情とそれぞれ向かい合うことで、脚を前へと進める動力となる。 そして、 今回は、いつものBOSS部屋前の状況とはやや違う。 今いるのは、禁足地の地下11層のフィールド内であり、BOSS部屋にたどり着いたわけではない。 だが、向こう側から感じる気配は、今まで遭遇したレッサーデーモンとは比べ物にならないほど。 「なぁ、あんた等が探しているメンバー……って事はないのか?」 「いぇ……残念ながら違う」 アリスは即答した。 「なら、話しは簡単だ。徘徊型のBOSS……かもな」 俺はボソリと呟く。 立ち止まり武器を構える俺たちとは対照的に、向こうから小さな影がゆっくりとやってきた。 「どうして……どうしてなの……」 啜り泣き、わずかな言葉を発している。どうやら人型のようだ。女の子だろうか。小さな紅いワンピースだけを着ており、素足のまま。 「いや、そもそも『モンスター』と決めつけるのは早いのかもしれない」 「待ちなさい」 「大丈夫ですよ、もしかしたらゼーフィアさんや総隊長の事何か知っているかもしれませんよ?」 そう言い、アリスの忠告を無視し、近づいた一刀流侍型の作兵衛。 「どうしたんだい、君独りかい?」 「そう……いつも独りになるの」 泣きながら答える少女。 「泣いちゃだめだよ、ほら泣き止んで?ねぇ?」 「無理なの……私を壊してくれる人がいないからみんな真っ黒になっちゃう……」 「えっ?壊す?」 泣いている少女の周りに、魔法陣が突如として出現。その瞬間、作兵衛の足元から黒い火柱が出現し、全身を一瞬にして焼いてしまった。
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