第32話 後継者と秋山からの依頼

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彼女が語った真実は予想外の内容であった。その為、上手く理解しようとは試みたが、やはり素直に受け入れ難い部分があった。 「アリス……あんたが言った『本当に』の意味は何を指しているのだ?」 俺の問いに対し、答えるアリス。 「文字通りです。魔法を使うモンスターであれば『討伐』ではなく『消滅』します。存在自体を消してしまうので、報酬を獲ることはありません」 彼女はゆっくりではあったが、言葉を選びながらも答えてくれた。 そして、最大の疑念が俺の脳に浮かび上がる。 「プレイヤーも……か?」 「残念ながら……」 アリスは表現を誤魔化した。だが、彼女の表情と今までの会話の流れでは、モンスターだけでないことは俺でも察することができた。 「勿論、制御はできます。ただ、強力な魔法を使用されれば、もう1人の私が暴走しようとするのです……」 なるほどな。 さっき、突如現れた少女の魔法に対して、【魔女狩り】側のアリスが反応してしまったわけだ。 通常時は『剣聖のアリス』であり、魔法を使用する者を自分から攻撃しなければそれで済む。だが、強力な魔法を発動されれば、彼女の中の【魔女狩り】の部分が暴れだす。 で、先ほどは暴走させまいと、必死に押さえ込んだ為、体調が一時的に悪化したのか。 アリスが教えてくれたことにより、このタイミングで今までの疑問が解決することとなった。 『何故、蒼の一撃には剣士のみで魔法使いがいないのか』 それは、単純に剣士だけでメンバーを固めたいという願望ではなく、本当に魔法使いがメンバー内にいてもらうと困るからだった。 アリスの中の魔女狩り部分が暴走すれば、プレイヤーを倒してしまうかもしれない。 いや、倒してしまうだなんて、そんな生温い表現では済まされない。 先ほどの彼女の様子から考えると、消滅させてしまうのだろう。 消滅とは、つまり…… 『アカウントの破壊』 その『結果』は今問題になっているこの禁足地で起きる事象と全く同じである。 アリスの魔女狩りに禁足地のプレイヤーデス現象。 そして、姿を眩ました(4)番隊長であるゼーフィアの存在…… どうも、この一件は『蒼の一撃』を中心に起きているようだ。
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