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「Dr.徳永。君がアイテム使いでよかったぞ。魔法使いであれば……」
殺してしまうかもしれない……か。
確かに彼女の刃がこちらに向かえば勝てるとは到底思えない。
だが、すまない。
どうやら、その不安要素は拭えそうにもない。
「『良かった』だなんてよせよ。まだ何も解決してないし、何より、あんたらも見ただろ?」
俺たちが見た光景は決して美しいものではなかった。
殺された者は死体として転がったままであり、焼かれた者は何一つ残りもしなかった。
プレイヤーが倒された場合、それを知らせる案内が表記されるが、それすらも出現しなかった。
つまり、
この禁足地で倒された者は、情報どおりプレイヤーのデータそのものに大きな損傷を与えている可能性がある。
そして、アリスにも、その力がある……のか。
「なぁ、アリス……。あんた、元々【魔女狩り】の力を身につけていたのか?」
「いえ、違うわ」
俺が思っていた答えと違った。
「じゃあ、いつからだ?最近か?」
「えぇ。この禁足地が現れる少し前……だったかしら。フリーフィールドでゼーフィアと探索中に、モンスターの群れと遭遇したときから」
ここもゼーフィアか。
「き、来たぞ!!さっきの少女が!」
ゆっくりとではあるが確実に俺たちを追いかけてきていた。
だが、少女は独りではなかった。すぐ後ろを歩く男の姿があった。
「ゼ……フィア……さん?」
「いやいや、みんなご機嫌いかがですか?」
細い眼と口がにっこりと笑う。この長身の男に対し、蒼の一撃のメンバーはゼーフィアと呼んだ。
こいつが……ゼーフィア。
禁足地にいるにも関わらず、無警戒の仕草を見せる。まるで街中にいるような感覚で奴はノコノコと現れた。
「何故ここに?」
「ゼーフィアよ。突然姿を消した理由を述べよ」
アリスとグデンファーからの問い。
ゼーフィアは面倒と思っているのか、頭をかきながら答えた。
「いい空間でしょ?堪能してください。あと、グデンファー元副総隊長の質問は何でしたっけ……消えた理由でしたか」
この時点でここにいる人間誰もが理解した。
「構えっ!!」
アリスの鶴の一声で場は一瞬にして張りつめた。
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