第32話 後継者と秋山からの依頼

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「Dr.徳永。君がアイテム使いでよかったぞ。魔法使いであれば……」 殺してしまうかもしれない……か。 確かに彼女の刃がこちらに向かえば勝てるとは到底思えない。 だが、すまない。 どうやら、その不安要素は拭えそうにもない。 「『良かった』だなんてよせよ。まだ何も解決してないし、何より、あんたらも見ただろ?」 俺たちが見た光景は決して美しいものではなかった。 殺された者は死体として転がったままであり、焼かれた者は何一つ残りもしなかった。 プレイヤーが倒された場合、それを知らせる案内が表記されるが、それすらも出現しなかった。 つまり、 この禁足地で倒された者は、情報どおりプレイヤーのデータそのものに大きな損傷を与えている可能性がある。 そして、アリスにも、その力がある……のか。 「なぁ、アリス……。あんた、元々【魔女狩り】の力を身につけていたのか?」 「いえ、違うわ」 俺が思っていた答えと違った。 「じゃあ、いつからだ?最近か?」 「えぇ。この禁足地が現れる少し前……だったかしら。フリーフィールドでゼーフィアと探索中に、モンスターの群れと遭遇したときから」 ここもゼーフィアか。 「き、来たぞ!!さっきの少女が!」 ゆっくりとではあるが確実に俺たちを追いかけてきていた。 だが、少女は独りではなかった。すぐ後ろを歩く男の姿があった。 「ゼ……フィア……さん?」 「いやいや、みんなご機嫌いかがですか?」 細い眼と口がにっこりと笑う。この長身の男に対し、蒼の一撃のメンバーはゼーフィアと呼んだ。 こいつが……ゼーフィア。 禁足地にいるにも関わらず、無警戒の仕草を見せる。まるで街中にいるような感覚で奴はノコノコと現れた。 「何故ここに?」 「ゼーフィアよ。突然姿を消した理由を述べよ」 アリスとグデンファーからの問い。 ゼーフィアは面倒と思っているのか、頭をかきながら答えた。 「いい空間でしょ?堪能してください。あと、グデンファー()副総隊長の質問は何でしたっけ……消えた理由でしたか」 この時点でここにいる人間誰もが理解した。 「構えっ!!」 アリスの鶴の一声で場は一瞬にして張りつめた。
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