第32話 後継者と秋山からの依頼

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「アリス……君は実に惜しい器でした」 語りだすゼーフィア。蒼の一撃のメンバーから囲まれても動じない。 「ハバ総隊長の……行方を知っているなら教えなさい。貴方の行方を追っていたのよ?」 「あぁ……嗅ぎ付けたようだったね……私の計画に。実につまらないプレイヤーだった。私に逆らわなければ、地位も能力も失うことも無かったのですが」 呆れたように鼻で嗤う。 「そ……総隊長が、そんな……」 落胆するアリス。 だが、グデンファー(この男)は違った。 感情に左右されず、まだ冷静にこの場に存在していた。 「ふむ……して、ゼーフィアよ。総隊長()殺しをしてまで遂行したい計画とは?」 「副総……。あなたなら知ってますよね?スキルを奪われる事件が過去にあったことを」 スキルが奪われた怪事件。恐らくそれは『魔女オズワルの妬み』を指しているのだろう。 グデンファーもこのゲーム歴が長いらしいから知っているのかもしれない。 俺も知ってる。バディ・バトルのイベント前にズンセックから新しい情報は入手している。 結局、あのタイミングでは、ハイカカオの能力が事件の現象と酷似していただけで、実際にはハイカカオは犯人ではなかった。 それに…… 俺は、魔女オズワルの妬み事件の被害者の1人でもある。 「うむ……勿論だ」 ゼーフィアの問いに応えるグデンファー副総隊長。 「計画……この世界と関係あるのか?」 続いて、俺も問いをぶつける。ゼーフィアからすれば蒼の一撃(元メンバー)以外は眼中に無かったようで「君は?」と尋ねるが、眼は笑っていない。 微笑みを崩さずとも伝わる敵意。 「安心しろ。俺は付き添いの荷物持ち(バックパッカー)だ」 「雑用係(フティリティー)から口出しされると興醒めします……まぁ、いいでしょう。この空間では、強者も弱者も(わたし)の前では無力……最期ですので特別に教えてあげましょう」 ゼーフィアは語った。勿論、笑みを崩さず。 奴の話では、魔女オズワルの妬み事件に深く共感したらしい。他のプレイヤーの存在自体を脅かすという行為に独特の美しさを感じたという。 そして、 この世界はゼーフィアが産み出した規格外(バグ)の一部だと。ここでは、ゲーム運営側の監視外らしく、セキュリティも存在しない。 その空間内で起きた事象はダイレクトにプレイヤーのアカウントに反映されてしまう。 能力を奪えば喪い、身体を破壊すればアカウントごと消えて無くなる。 彼はそう語った。 「そうかい。じゃあ、あんたが黒幕なんだな?」 「違います……神です。この空間を支配する唯一神。そして、神である私は直接には関与しない。それは美しくないからね……私には他を圧倒する美しい右腕が必要だった。そう、美しい技と容姿を兼ね備えたアリス……貴女が」 「……え?」 「だから私は、貴女に『とある能力』を与えた。私の右腕として活躍するために。全ての者を破壊する『舞い』を私の側で披露してもらう為に」
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