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終焉の炎は一時の熱量と共に姿を出すが、何一つ燃やすことなくあっさりと消える。
阻まれた炎は存在価値など産み出さず、役目を全うすることなくいなくなる。
ライが作った僅かな時間ではあったが、最初に動き出したのはグデンファー。
鍛えあげられた筋力から繰り出された技は風貌とは相反し、無駄のない繊細な動きであった。
避けることに必死のゼーフィアであったが、それでもグデンファーの剣技が優っている事が証明された。
額を僅かに掠めた代償として、ゼーフィアのライフゲージの色が徐々に喪い始めている。
急所を外しているとはいえ、一歩間違っていれば彼は無事ではすまなかっただろう。
ゼーフィアの反撃に対し、楽々と距離を取り離れた。
「あんた……本当にナンバー2かよ?動きが洗礼され過ぎている」
「そっくりそのままお返ししようかのぅ。Dr.徳永。治癒師にしては、最前線が似合うようじゃな。首を差し出す行為に、先程の観察眼で相手の手を遮断する一手を導きだすとは」
「ん?俺みたいなジョブが前線でウロチョロするのは蒼の一撃の流儀に反するのか?」
「流儀か……実にくだらない枠だ。流儀の中で闘えば勝てると錯覚している者が最近増えてのう。戦場で『流儀』なんぞなんの役にもたたぬ。それ程、戦場は一瞬にして形を変え、我々の命を狙ってくる。順応し対応する姿勢こそ戦士。のぅ、治癒師」
グデンファーはこちらをちらりと見て笑った。
戦場でも、こうして笑っていられる者は決して多くはない。
勿論、圧倒的に有利な状況下で笑っている者は多い。勝利を確信しての笑いだ。
だが、グデンファーの笑いは違う。
圧倒的に不利な状況下であったとしても、笑っていられる姿勢。
『闘い』を純粋に堪能する姿勢だ。
「じゃあ、遠慮なく暴れさせてもらうぞ?あのヘカテーとかいう奴……危ないぞ」
「勿論じゃ。……して、ゼーフィアはどう感じる?」
「ん?肆番の事か?もしかして、あいつも脅威なのか?!実はドラゴンに変身できて攻撃力とかが限界突破しちゃう系のプレイヤーなのか?」
「……はっはっは!!その様子じゃ、蒼の一撃の元肆番隊長を脅威だと思ってない様じゃのう」
「駄目なのか?」
「いや、それでいい。先入観で勝ち負けを先に決める者も最近多いからのう。安心しなされ。ゼーフィアはワシが狩ろう」
そう言うと、グデンファーは激しいオーラを纏いながら構えた。飽和する気の流れがやけに俺の身体を怪しく通過する。
誰よりも近くにいる俺だからわかる。
グデンファーはこの場にいる最強の剣士であることを。
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