第32話 後継者と秋山からの依頼

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確かに俺の耳にはそう聞こえたんだ。 アリスの命が今まさに奪われようとしていることを俺は理解した。 俺の脳は『彼女を救え』と命令が降りているはず。 しかし、身体は俺の命令を無視し、脱力したまま動こうとしない。 やけに温かい。 今までにない程の違和感に俺は目線をゆっくりと下げてみた。 朱色の小さなエフェクトが結晶となり、俺の身体から放出されている。まるでそこだけ時の流れが遅くなっているようにさえ感じた。 それだけだった。 真っ直ぐに俺の身体から突き抜けた刃は、目的を達成したようで、そのまま動こうとしない。 この静かな状況下で、やけに五月蝿く聞こえるLアラートの音が不釣り合いだ。 このまま静かに眼を閉じれば全てが静かに終わりそうなのに。。 残念ながら、全てが無に感じるほど静かだと感じないのは、俺のライフゲージがまだ残っているからなのか。 あ…… 俺、アリスに刺されたのか…… 朦朧とし始める俺の視界が不意に暗くなった。 大きい何かが目の前に塞がったのだと、理解したのは、それから間もなくの事だった。 グデンファーの悲鳴が聞こえるまでは…… 「ぐぅ〝ぅぅあああ〝」 「なんと……神である私の一撃を、まさか片腕を犠牲にしてまで護るとは」 ゼーフィアの振りかざした剣はアリスを傷つけることなかった。代わりに、グデンファーの片腕を切断することとなった。 「彼も、献身的に護ったようですが、そんなアリスに攻撃されているだなんて……実に……ふふっ……いや、失礼。あまりにも滑稽でつい……」 笑いを堪えるゼーフィア。 彼の目に映っている俺やグデンファーの姿はどう映っているかは知らない。 だが、汚い笑みを投げつけられているような気がした。 「今……貴方たちはどんな気持ちですか?是非、お聞かせください、いっひ」 意外な質問に俺やグデンファーも笑ってしまった。 そして謀ったかのように俺たちは声を併せて告げる。 「衛れて何よりさ」と。 俺たちの余裕じみた回答に対し、業を煮やした黒幕が声を粗げはじめた。 「目障りですよ、貴方達」 感情的になっているのは間違いないようだ。既に目は笑っておらず、明らかな敵意をこちらに向けては持っていた武器を構え直した。 でも、 衛れて何よりさ。 みんなが攻撃できる時間を『衛れて(・・・)』な。 ゼーフィアのライフゲージは再び減少を迎える。 蒼の一撃のメンバーがそれぞれ持てる最高の剣技を持って、手を弛めることなく攻撃に転じていた。 彼らの織り成す技は、まるで1つの連撃技のよう。 深く、強く、そして何かを断ち切るかのように、それぞれの技は光を帯びていた。 その光は元メンバーとの訣別(けつべつ)を告げる哀しみの(かがや)きにさえ感じた。 「お……おのれ……」 背中に多数の傷を負っても簡単な倒れない姿をみると、やはり(4)番隊長だっただけはある。 「Dr.徳永……。まだ生きているなら見ておきなさい」 そう言って構えるグデンファー。今までの構えとは違い、肘を上げ、剣先を地面に向かうようにして静止していた。 片腕ではあるが、身体の軸が一切ぶれていない。
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