第33話 リコ 欲しがりにつき

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「とりあえず説明して。誰なの?嘘なの??ホントなの???」  言葉を並べるあたり、リコらしい良い連撃だ。手数で相手を圧倒するのは攻撃において基本中の基本とも言えよう。 「誰……って、アリスだよ」 「知らないわよ?!し、知ってはいるケド……」  知ってるのに、知らないとはどういう事だよ。俺の脳はいよいよウイルスに侵されておかしくなったのか?それとも、禁足地という未開の地に足を踏み入れてしまった際の後遺症か何かか。  それにしてもリコの慌てようと来たら……。ここはモンスターがいるフリーフィールドとは違って、街中の完全な安全エリアだぞ??何をそんなに慌てる必要があるのか。  俺は医療従事者ではあるが、リコが慌てる病名が全くわからん。降参だ、検討もつかない。 「あの……失礼します」 「ン?本日ノ診察ハ、終了シテルゾ?」  ローブで顔をすっぽり隠しているプレイヤーが入り口からやってきた。いち早く反応したのはテローゼ。ライの白衣を羽織り、ぷかぷかと浮きながらやってきて、すぐさま追い返そうとしていた。 「テローゼさんよ。患者をそんな無下に扱うだなんて一人前とはまだまだ言えませんな」  俺が唯一テローゼに勝っている点があるとするならば、接遇だろう。俺だって愛想が良いとは程遠い分類。誰に対しても隔たり無くできるリシャミーに比べれば俺の対人スキルはLv1どころか、まだチュートリアルクラスだ。だがそれでもテローゼより俺の方が患者に対する扱いは出来ているとは思う。 「デモ、コイツ女ダゾ?」 「私は徳永さんに……」 「トクナガ?!ソンナ奴イナイゾ?」  はい、残念だなテローゼ。女性と聞いて一瞬敗北宣言しようかと思ったが、徳永とは俺のリアルネームの方だ。これで俺の患者確定じゃないか。助かったぜ。 「女カ。珍シイ事モアルモノダナ」  ふはははは。負け惜しみかい? 「急に呼び出すなんて、何事ですか?」  頭をすっぽり覆っていたフードをゆっくりと取る女性。すると、訪問者は剣聖のアリスであった。確かに、来るようにメッセージを送ったのは俺だが、まさかこんなに早く来るとは思っていなかったので、純粋に俺宛の患者だと思い心弾んだじゃないか、くそぅ。  仕方ない。とりあえずリコの誤解から解くとするか。 「紹介するぞ。こいつが蒼の一撃のアリスだ。禁足地には、蒼の一撃メンバー達とともに調査に行っていただけのこと。アリスからも何か言ってくれよ。例の記事の件でさ」 「この方達はどのようなご関係で?」  アリスはその場にいたリコやソネル。それにテローゼ見て聞いてきたので、大事な仲間であることを伝えた。 「では、皆さんにお伝えします」  キリっとした声に変わる。流石は超大型ギルド蒼の一撃の参番隊長だ。ピリッとした空気が彼女らしいな。すっかり本調子に戻ったみたいだ。 「私は蒼の一撃のアリスと申します。徳永さんの大事なお仲間にお願いがあります。彼に蒼の一撃の専属ヒーラーになっていただきたいのです」 ……はい?
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