第33話 リコ 欲しがりにつき

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 アリスやハバがやって来てからどれくらいの時が過ぎただろうか。闘いが終わり、平穏の日々を少しは過ごせるだろうと淡い期待があったのだが、ハバの発言で現実に引き戻された感が拭えない。  ここはゲームの世界であり、仮想空間である。この世界を堪能する上で、本来なら現実世界に比べ枷は少ない筈である。だが、禁足地やオズワルというワードが俺の身体を縛り付けてくる。  この世界が窮屈だと感じやすくなったのは、間違いなく秋山との接触があってからである。 「オズワルね……」 「そっ。白衣さんも知ってるんちゃう?ほんで、今日アリスたんと来たんは」 「蒼の一撃に入って一緒に活動しようってか??悪いが願い下げだな」 「ちゃうちゃう。そんな厚かましいお願いするわけないやん。アリスたんは先急いでそんな事言ったみたいやけど、お願いしたい件はそんな事ちゃうねん」 「ほぅ。では一体何だ?」 「お願いしたいのはズバリこうや。禁足地に調査に行くなら、アリスたんと老兵(グデンファー)を是非お供させてほしいねん」  まさかのお願いであった。 「ヲイヲイ。蒼ノ一撃 ノ ツートップヲ『好キニ使エ』 トハ、気前ガイイナ」  テローゼの言う通りだ。現隊長のアリスと、グデンファー副総の2人が戦力に加わるのであれば、禁足地の調査に対して捗ることは間違いない。  現段階では禁足地の調査に行く用はないが、今後秋山の依頼で行く可能性は十分にある。 「解答はすぐに欲しいとは言わんし、要件はちゃんと伝えたさかい、ほなアリスたん。邪魔者は『おいとま』しようか?」  ハバはアリスにも退室を促し、用件を俺に伝えるなり『ほな、さいなら』と笑顔で手を振るハバと、律儀にも敬礼をしているアリス。そして、2人はこの場から去っていった。  流石にリコやソネル達にはこれ以上隠し通せないと判断した俺は、秋山の依頼の下、蒼の一撃の活動に潜入し、彼らの命を護っていた事と禁足地の事について話せる範囲で伝えた。 「そんな危険な事になっていただなんて」 「安心しろ。ファラオも現れて助けてくれたぞ?」  ふと我に帰る。ファラオが現れて、確かにアリスの命を救う形ににはなったが、ファラオに対して安易に『安心』していいものなのだろうか。ファラオはヘカテーやアリスの魔女狩りの力に対して反応していただけで、俺たちを救おうとして行動してくれていたという確証がどこにもない。  次に出会す際は敵として……かもしれない事だけは肝に銘じて置こう。ただ、包帯を回収されなかったことだけは良かった。これからも粗末に乱暴に扱わせていただきます。 「ソネルちゃん、ちょっとこっちに来て」  リコからの呼び掛けで2人は隣の部屋に移動した。 「お姉ちゃん……どうしたの?」 「由々しきよ、ソネルちゃん……」 「ユユ……シキ?」 「そう。『由々しき事態』よ。このまま放置してたら、あのアリスっていう剣士に、院長取られちゃうわ」  2人で内緒の密会をしているところに、テローゼが壁をすり抜けてやってきた。 「何コソコソ話シテルンダ?2人トモ」 「2人で、さっき来てた剣士より強くなろうって話ししてたのよ」  リコはテローゼにそう伝えると、少し考えた後、2人にある提案をした。 「強クナル方法 有ルゾ?」
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