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「隠れても無駄よ?!観念しなさいっ」
ガサ入れに来た警部のように武器を構えながら押しかけたリコ。構えた剣はそれぞれ青白く輝いており、いつでも剣技を発動できる準備をしていた。
「そう。無駄……なんです」
リコに続き、恐る恐る後から入るソネル。背後には黒龍が渦を巻きながら待機している。
サーカスのラストワード『玲瓏』。ソネルが『詐欺師』として発動できる中で最大の火力を誇る召還魔法……のそっくりさんであった。
ソネルお得意の嘘で塗り固めたフェイクの龍である。実体は存在しない為、噛みついたとしてもゴーストのようにすり抜けてしまう。
ゴーストに対してすり抜けてしまう嘘を宛がうのも些か疑問が残るが、彼女なりのお化け対策なのだろう。『虚勢で相手を萎縮させる』彼女らしい戦法ではある。
過度な予防線と言えばそれまでだが、戦闘で後手に回れば圧倒的不利な立場に立たされる二人にとってはこれぐらいが丁度いいのかもしれない。
だが、悲しいことに二人の努力は無駄に終わる結果を迎えてしまう。机に椅子、それに航海日誌が複数冊あるぐらいで、「がはは良く来たな」と仁王立ちで出迎えてくれるモンスターの姿はそこにはなかった。
「あれ、この部屋も外れなの?」
「他に……部屋はない」
1部屋毎虱潰しに探索したが、モンスターとの接触は未だに0が続く。ライフゲージも満タンなまま。
「不思議……」
ソネルが呟く。
「船長の姿がないのに、船長の帽子が壁に掛けてある」
指差した壁の方向にリコも目をやる。確かに少し派手な帽子があった。
「そりゃあ、船長の部屋だからあるでしょ?」
「そう……なんだけど」
二人は船長室を少し時間をかけて調べたが全く手がかりは発見できなかった。
だが、ソネルは先程から気になっている船長の帽子を手にしてみた。
「あったよ……お姉ちゃん。隠されてた」
壁に1つの鍵が既に掛けられており、それを多い隠すかのように帽子が掛けられていたのだ。
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