第33話 リコ 欲しがりにつき

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 手がかりが皆無であったが、ここに来てストーリーが進みそうな兆しを感じた。手にした鍵を調べても【船内の鍵A】表示以外何もない。 「あと、あるとすれば、この航海日誌ぐらいなんだけど、何て書いてあるかわからない」  拡げたページには規則的に並んだ記号らしきものが記載されていた。 「なんだろうね……怪しい感じもする」とソネルも覗き込んではみたが何もわからずにいた。 「とりあえずさ、この鍵の使える場所を捜そっか」  リコの提案により二人は引き続き船内の調査を始めたが、モンスターに遭遇するどころか、鍵穴さえ見つからなかった。 「ふぅ~。これだけ頑張って調べたんだからもうクエストクリアで良くない?鍵の付いていた扉なんて船長室以外なかったもん」 「ふふっ……そうだね」  二人からは疲れが見え始め、ゴースト系モンスターに対する恐怖心は薄れてしまったようだ。 「鍵穴が見つからないなんて、鍵穴自体がゴーストなんだよ、きっと」 「えっ……お姉ちゃん、今なんて……」 「ほぇ?だから、鍵穴が見えない、ゴースト……系……あ゛ぁ゛ぁ゛!!それだ!!」  いつからか二人は鍵穴=鍵のかかった扉という認識の下調査してしまっていた。不運にも船長室がそうだった為、次もそうだろうと無意識のうちにそう思い込んでいたのだった。 「鍵穴は見えないように隠されてる!帽子の裏に鍵があったように」  そして二人はあることに気がつく。この船に潜入する前、外観を見ていたときに『高さがある船』だと感じていた。だが、船内に入ると、甲板から船内に繋がる階段はあったものの、それ以外の下る階段と遭遇しなかった。  考察は確信へと変わる。 『下に通じる隠し扉があると』  下りの階段を管理する鍵となれば、大きな蓋上の扉になるはず。それを隠すとなると、選択肢は限りなく少なくなる。  王道な方法としては『覆い隠す』  船内で違和感なく隠すなら、絨毯やマット等の布製で覆う。船内であったのは1ヵ所だけ。  操舵室内と反対方向にあった動力室。その手前にあった少し大きめの『マット』だ。  鍵を失くさないように握りしめながら、動力室手前まで移動した二人。やはり入口手前に大きなマットが敷かれていた。 「いくよ」  リコがゆっくりとマットを捲ってみると、お目当ての鍵穴つきのハッチが姿を現した。手に入れた鍵を差し込むと違和感なく鍵が回転し『カチャリ』と乾いた音が二人の心を解放した。  喜ぶ二人は蓋上の扉を持ち上げると、下のフロアに通じる梯子(はしご)があった。
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