第33話 リコ 欲しがりにつき

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 程なくして2人を待ち構えていたのは扉であった。これまでも船内を探索する度に幾度なく目にしたが、これまでの扉とは全くもって別次元であった。  これまで開けてきた扉は『船内』ということもあり、扉自体が雨風に晒されているわけでは無い為、腐食や酷い劣化した部分は見受けられなかった。  錆び付いた金属付近には(うじ)がわき、ヤスデに似た節足動物がゆっくりと扉を徘徊しており、長年使用されていない様子が窺えた。  躊躇う2人ではあったが、モンスターとして認識していないことを考慮し『あれは虫じゃない。オブジェクト。オブジェクト……』と呪文のように唱えながら取っ手に触れ開けた。 「お姉ちゃん……これって」 「えぇ。『牢屋(ろうや)』ね」  汚い扉の向こう側に待ち構えていた鉄格子。短い間隔で設置しされており、投獄者が脱獄なんて淡い期待を持たせぬ仕様なのだろう。  長い間換気していないのだろう。重く漂った空気が少しずつ廊下へと移動しているのを二人は肌で感じていた。 「お、お姉ちゃん……中に何かいるよ?!」  牢屋の中には、(うごめ)く一体のモンスターの姿が。皮膚は溶けるように(ただ)れており、紫色の液体が滲み出ては垂れ流している。  恐れていたとき、リコはモンスターと目があった。モンスターも認識しこちらに近づく。が、幸いにも牢があるためこれ以上近づけない。モンスターが近づいた為、システムが把握した情報がリコ達の元へと届く。 【招かざる屍体 ブーラス】  モンスターのライフゲージは13本。効果として、魔法無効化、打撃半減化が表示されていた。焦る2人であったが、リコはそのときにとある違和感を感じていた。 「ソネルちゃん、このモンスターどう思う?」 「こんな化物と闘ったら魔力が枯渇しちゃう……」  ソネルの素直な反応に同意見だった。 「だよね?でもさ、このモンスター、強すぎるスペックのわりには素直に牢屋に入っていると思わない?このモンスターより強い誰かがいれたのかな?」  モンスターは何故牢屋に閉じ込められているのだろうかという点についてリコは疑問に思ったのだ。 「確かに……違和感あるかも」  ソネルは集中し、モンスターをじっと見つめる。視線を逸らさずにしっかりと。 「お姉ちゃん!!このモンスターのライフゲージの表示が……少しおかしい。僅かに揺らぎを感じたの。もしかしたら、ブラフ……かも」 「嘘……ってこと?!どういう事なんだろう」 その時、システム側から情報が届いた。 【地上階でモンスターが発生しました】 「え?こんな時に?」 「お姉ちゃん……あのね」 「どうしたの?」  ソネルは意を決して頼んでみた。 「怖いけど……船長室に戻ってみたいの」
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