第33話 リコ 欲しがりにつき

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 やはり船長室内は何もなく、先程訪れたときと変わっていなかった。船長室の帽子が壁に掛かっており、航海日誌があるだけの部屋。幸い、この部屋にはゴースト系のモンスターはいないようだ。壁をすり抜けてモンスターもやって来ない。もしかしたら、敵がこない安置なのかもしれない。  唯一、ホッと溜め息をつくことができる休息の場所。だが、ソネルの顔はいつもより厳しい表情をしていた。 「やっぱり……来てよかった」 「お化けが来ないから?」 「もぅ……茶化し方までライさんに似てきた……」  ソネルは口元だけ怒っていたが、顔全体の表情はいつも通りの神秘的な綺麗な顔をしていた。 「初め来たときにわかったら良かった……この部屋、お化けの残り香が混じっている」 「の、残り香?!」  ソネルの言葉に純粋に突っ込んだリコ。ソネルは少し恥ずかしそうに説明をした。  お化け、つまりゴースト系モンスターは消えたり、現れたりと存在を変化させるタイプである。それは相手の認知を操作、もしくは混乱させることで成立させている。  偽り・欺き  他者を騙すことが必要不可欠。  詐欺師は言った。「嘘は私の最も得意とする分野。相手がお化けでも、嘘なら負けない」  そう言いながら、ソネルは手を伸ばした。  壁にかけられた船長の帽子に。  そしてゆっくりと帽子を壁から離してみた。 「?!また鍵がかかっている!!え?私も持っているのに?!」  リコが持っている鍵と同じ鍵がまた掛けられていたのだ。  「種も仕掛けも……ありません」  ちょっと照れながらソネルは鍵を取ってはまた帽子を掛け、ひょいっと帽子を移動させた。すると、一瞬にしてまた鍵が掛けられているではありませんか。  リコは開いた口が塞がらなかった。 「嘘をつく側って……同じパターンしか用意しない人が大抵なの……同じシチュエーションで毎回『嘘』のバリエーションを変えられるのは詐欺師くらい……」  そう言いながら何回も何回も帽子を掛けては外し、鍵を出現させた。  ソネルはこの部屋の違和感に気づいたのだ。お化けはいなくても、お化けが悪戯(いたずら)している形跡があることに。  そして、帽子の向こうに鍵を隠すトリックも、お化けが『帽子が壁に掛かる』→『鍵を出現させる』というプログラムしただけに過ぎない。  まさか、見破られ何回も実行されるだなんてお化け側も想定していなかったのであろう。鍵が4個目が出て以降、それ以上何度やっても鍵は出現しなくなった。  リコの所持していた鍵も含め、計4つの鍵を机に列べる。 「う~ん。どれが本物の鍵かな」 「大丈夫……3番目に出てきた鍵が本物……」 「ソネルちゃん、見ただけでわかるの?!」 「うん……1、2、4個目は私が扱いやすいオーラを出してる……つまりフェイク用に用意された鍵って事……」
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