第33話 リコ 欲しがりにつき

19/27
前へ
/345ページ
次へ
 嘘を扱うソネルだからこそ、嘘に混じる本物を探し出すのは簡単だったのかもしれない。加えて、ゴーストが仕込んだ悪戯であるならば、詐欺師をマスターしているソネルの方が欺くプロであり、見抜けない方がおかしい。  見た目は全くわからない。区別もつかない4つの鍵。その中でソネルは『これが本物』だと断言した。勿論、リコは疑ったりせずに大事にアイテムストレージに鍵をしまった。 「今のでわかった……この部屋は他にも悪戯されているところがある……」  何もない部屋には誰もいなかったが、誰かが何かをした形跡は存在した。警戒心をより一層高めたソネル。探索に特化していないが、偽りを捜しあてるのは可能。  感じるままに。きっとそうであると信じるままに。  導いた右手はゆっくりと帆を進めた。たどり着いた場所には、見覚えのある航海日誌が置かれた机へ。 「この日誌……悪戯されてる」  ソネル捜査官のガサ入れにより、次なる証拠品を言い当てた。推理はなく、手を伸ばして感じるままに室内を歩いて捜していた姿は、ダウジングでお宝を探すトレジャーハンターと大差なかった。 「これって、何て書いてあるかわからなかったよね」  リコは再度日誌を手にし中を確認する。やはり、解読不能の文字が羅列されていた。その言葉に何の疑念も持たずにいた。なにせ、ここはゲームの世界。読めない文字が存在してもそれは『仕様』と思えばそれまでだからだ。攻略に関係ないものだと割りきれば、気にもならない。  だが、読めないことが。  悪戯だったとしたら……  ソネルは航海日誌に対し回復魔法を浴びせてみた。ライフゲージを持たない物に対し魔法を唱えるのは端からみれば滑稽かもしれない。だが、回復魔法を嫌うゴーストが施した悪戯であるならば……  駄目元で魔法を発動したソネル。すると航海日誌に記されていた文字が動き出し、逃げるように机から降り、慌てて扉の隙間から逃げて行った。 「殺虫剤かけられた虫みたい」  リコは、あははと笑いながら航海日誌を確認する。すると、読めずにいた航海日誌に新たな文字が表示されていた。 ーーーーー ○月✕日  最悪な船と遭遇した。  敵の姿が見えないだけでなく、偽る事に特化したモンスターばかり乗っている船だ。あの船には遭遇しないよう、航海を進めていたが、気づかないうちに潮の流れが変化していたのであろう。  だが、私は移動のスキルがある。  一時的に湖へと船ごと移動させ、船内に潜んだゴーストを駆逐する計画に移する。 ーーー 「お姉ちゃん……」 「えぇ。この船、この日誌以降ゴースト系モンスターに乗っ取られたみたいね」
/345ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1041人が本棚に入れています
本棚に追加