第33話 リコ 欲しがりにつき

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 航海日誌に記されていたいることは正しい内容かどうかはわからないが、リコとソネルが船内で体験している事実と照らし合わせても違和感はなかった。  だが、同時に解かねばならない問題へと直面した。  『では、牢屋の中にいたモンスターは何なのか』という点だ。  鉄格子越しに確認した内容では、モンスターであることは間違いない。【招かざる屍体 ブーラス】と対峙するメリットは全くない。仮に奴が、航海日誌に記された『最悪な船』の親玉だとすると、ブーラスをこのまま閉じ込めておくべきだ。  ところが、この仮定を正とした場合、解決できそうにない問いが追加される。それは、①何故ゴースト系モンスターが地上階だけに発生し、ブーラスの周りに出現しなかったのか②ブーラスを閉じ込めている鍵であろう【船内の鍵A】は何故ダミーまで存在していたのか③航海日誌を読めなくする必要が何故あったのか  以上の3点が二人を悩ませた。  悪戯をするゴースト系モンスターの仕業。真っ当な理由なんて無いのかもしれない。  だが、もしゴースト系モンスター側にとって、偽る事に利があるとすれば…… 「ねぇ、ソネルちゃん。次、私の意見聞いてもらっていい?」 「勿論……」 「地下に、また戻ろう。あの牢屋にいたモンスターは『モンスター』じゃない可能性がある」  牢屋にいるモンスターがモンスターじゃないと仮定するリコ。  見た情報が偽りだとすればーー  ゴースト系モンスターにとって、牢屋の中にいる物体を【招かざる屍体 ブーラス】と表記する方がメリットがあるとすれば、牢屋に入ってほしくない為、鍵を帽子で隠し、ダミーまで用意した。ブーラスと遭遇後、地上階にだけモンスターが現れたのは、船長室に潜入されたくなかったから。  そして、航海日誌を読めなくしたのは、偽ることに特化したモンスター集団であることを知られたくなかったから……  全ての疑問に説明ができる。  船長室から顔を出し廊下を窺う二人。だが、想像以上にゴースト系モンスターが増えており、先程のような相手の視界を計算して進むような潜入方法は不可能であった。 「ソネルちゃん。こういう時ってどう攻めたらいいか知ってる?」 「お姉ちゃんの事だから何となく想像できる……」 「じゃあ、いくよ?3、2、1……突破ぁ!!」  リコの合図とともに、ソネルは黒煙の魔法を発動した。廊下中が真っ黒になり、前後左右の視界が極端に悪くなった。 「一度通った道くらい歩数で憶えている。行こう、ソネルちゃん!」  
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