1041人が本棚に入れています
本棚に追加
(5)
移動ルートがわかっているとはいえ、敵に見つかることなく地下まで移動することは、黒煙の中であっても難しいミッションであった。敵と遭遇し、攻撃のモーションに入るゴーストもいたが、リコとソネルは迷うことなく進むことだけを優先した。立ち止まりさえしなければ、黒煙の効果でまた居場所を撹乱させることができる。
攻撃もせず、回復もせず、ただひたすらに地下への梯子まで突き抜けた二人。
呼吸をすることさえ忘れていたのであろうか。梯子を降りたときには、二人の息が上がっていた。
「何だか、いつも敵に追いかけまわされてばっかりだね」
「うん……鬼ごっこばっかり」
二人のライフゲージはかなりの減少をしていたものの、ソネルの回復魔法で完治した。地上階で発生したゴーストは、地下までは移動してこなかった。それに、地下はゴーストが発生しておらず、【招かざる屍体 ブーラス】以外の生物を確認できない。
ソネルの回復魔法は確率で成功するため、何度か発動に失敗したが、襲いかかってくる敵は存在しないため、落ち着いてすることができた。
お互いのライフゲージが完全回復したところで、リコは鍵を取り出した。
「ソネルちゃん。開けてみるよ?襲いかかって来たら許してね?」
「大丈夫……戦闘になっても勝つから」
二人でいるなら怖くない。
ソネルの表情は、そう語っているかのよう。リコもソネルの様子を見て安心する。
「これで、鍵が合わなくて『実は、地下2階へ繋がる鍵でした。この船は地下5階まであります』みたいなオチだったらどうしようね」
笑いながら冗談を言ってみる。するとソネルも応えた。
「船に穴開けて……沈没させよう」
「いいね、それ」
最早クエストクリアの達成条件なんてどうでも良かった。お化けごと湖に沈めちゃえばブーラスやお化け達も成仏するだろう。
そんな妄想で気を晴らしながら、ブーラスの入る牢屋の鍵穴に躊躇うことなく鍵を刺す。ゆっくりと反時計回りに回すと解錠を報せる音が鳴った。
二人は武器も魔法陣も用意せず牢屋内に入った。ライフゲージや効果が再度表示されていた。
最初のコメントを投稿しよう!