第33話 リコ 欲しがりにつき

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(5)  移動ルートがわかっているとはいえ、敵に見つかることなく地下まで移動することは、黒煙の中であっても難しいミッションであった。敵と遭遇し、攻撃のモーションに入るゴーストもいたが、リコとソネルは迷うことなく進むことだけを優先した。立ち止まりさえしなければ、黒煙の効果でまた居場所を撹乱させることができる。  攻撃もせず、回復もせず、ただひたすらに地下への梯子まで突き抜けた二人。  呼吸をすることさえ忘れていたのであろうか。梯子を降りたときには、二人の息が上がっていた。 「何だか、いつも敵に追いかけまわされてばっかりだね」 「うん……鬼ごっこばっかり」  二人のライフゲージはかなりの減少をしていたものの、ソネルの回復魔法で完治した。地上階で発生したゴーストは、地下までは移動してこなかった。それに、地下はゴーストが発生しておらず、【招かざる屍体 ブーラス】以外の生物を確認できない。  ソネルの回復魔法は確率で成功するため、何度か発動に失敗したが、襲いかかってくる敵は存在しないため、落ち着いてすることができた。  お互いのライフゲージが完全回復したところで、リコは鍵を取り出した。 「ソネルちゃん。開けてみるよ?襲いかかって来たら許してね?」 「大丈夫……戦闘になっても勝つから」  二人でいるなら怖くない。    ソネルの表情は、そう語っているかのよう。リコもソネルの様子を見て安心する。 「これで、鍵が合わなくて『実は、地下2階へ繋がる鍵でした。この船は地下5階まであります』みたいなオチだったらどうしようね」  笑いながら冗談を言ってみる。するとソネルも応えた。 「船に穴開けて……沈没させよう」 「いいね、それ」  最早クエストクリアの達成条件なんてどうでも良かった。お化けごと湖に沈めちゃえばブーラスやお化け達も成仏するだろう。  そんな妄想で気を晴らしながら、ブーラスの入る牢屋の鍵穴に躊躇うことなく鍵を刺す。ゆっくりと反時計回りに回すと解錠を報せる音が鳴った。  二人は武器も魔法陣も用意せず牢屋内に入った。ライフゲージや効果が再度表示されていた。
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