第33話 リコ 欲しがりにつき

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 単撃だった。剣技のモーションとしては、ただ単に一振しただけ。コマンドで言えば、弱パンチボタンを1回押しただけの単純な動作に過ぎない。  シャーロッテ。  彼女はあっさりと実演してみせた。 「はい、じゃあやってみて」  ペットボトルをひょいっと渡すかのように、借りていた武器をリコに返した。リコは思わず、返された武器を必要異常に点検した。 「……おかしい。攻撃力が増したバフ効果も付与されている形跡もない。『おかしい』点が1個もない。私が扱っているときと武器の攻撃力が変わっていない」  探しても種も仕掛けもない。リコが使用している時と変わらなかった。 「だから、武器壊してないでしょ?私は名刀を破壊するほど堕ちてないさ」 「いきなり、やれって言われても……ふぁえ!?」  躊躇しているリコの肩を急に掴まえ、向き合う形になった2人。お互いの唇が触れるか触れないかのギリギリの距離にリコは逆上(のぼ)せた。 「へっ……あ、あの、えっと、その……」  ねっとりと絡み合う脚。両方の肩を捕まれているので手も動かせずにいる。一瞬にして動きを封じられたリコは、近すぎるシャーロッテの華のような可憐な匂いに溺れていた。  魅力は距離に比例して伝わりやすくなる。  だが、シャーロッテは唇を奪うために近づいたのではなく、リコの眼を覗くために近づいていた。 「リコ君」 「んへ、へぇっと……」 「君は、他に長けた技を隠している……ね?私に隠し事なんて良くないんじゃない?」 「ひやひや(いやいや)ほんなほほはいへす(そんなもの無いです)」  意識朦朧とするリコ。 「いや、君に上手く騙されかけたよ。君は髪を挟む意外に長けている技があるはず……」  シャーロッテは掴んでいた肩をゆっくり解放する。リコはシャーロッテの問いかけに我に返った。 「どうして、それを……」 「少し君を覗かせてもらったよ。どうやら君は、その技を好いてはいないようだね。だから『代わりに』髪を整える、えっと、ハサミだっけ?それを使う技に置き換えて過ごしている。違うかい?」
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