第34話 領域外フリーフィールド

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 ログインしてすぐにPC(プレイヤーキャラクター)に絡まれた。小競り合いはどの世界でもあるが、流石海外のフリーフィールドだ。血に飢えた者が多いのは覚悟しておこう。 「止めなかったな、治癒屋」 「ん?何を。俺が奴等の相手をするべきだったと?」 「違う。金を巻き上げた事を、だ」  意外な質問をしてきた。BOSS級の威圧感でこれまで幾度なく他者を黙らしてきたハイカカオが、そんな事を気にしていた。 「止めるわけないだろ。奴等は『金の渡し方を教えてやる』と『交渉』してきたんだ。それにハイカカオは受けただけのこと。最悪の盤面を想定できない奴等が悪い」  そう。別に悪い事をしただなんて1ミリも思わない。奴等かの提案を素直に受けただけのこと。日本のゲームの世界では、安置では幾ら殴られてもゲームオーバーになるわけではない。  だが、『交渉』となれば話は変わってくる。財産を駆けたギャンブルをも可能になる。  『交渉』を介せば全てをベットした闘いをする事がいつでもすることができる。  ただ単に、多くのプレイヤーはそこまで行きすぎた『交渉』をしていないだけだ。  運営側から提供されている『安全な場所で過ごせる保証』下で無意識に楽しんでいる者が多い。  そう思うと、海外拠点のこのゲームの世界は、日本の世界より『自由』なのかもしれない。 「貴様は秋山等とは違うな」 「ん?そりゃそうだろ。あいつ等は社会でしっかり働いている公務員様で、俺は現実世界ではNPC。働かず、学びもせずにいる。ゲームの住民なのさ、俺は」 「そんな事ではない。俺様が言いたいのは、奴等よりこの世の理を理解していると言いたいだけだ」  そう言い残し、ハイカカオは到着したての細い路地を進む。気がつけば先程絡んできた2人組の姿も既に消えていた。ハイカカオはラストアタックをしていない。恐らく残ったライフゲージを大切にしながら逃げたのだろう。 「さて、何処に向かおうかな」  ゼーフィアの足取りを調べた政府によると、海外のゲーム内でバグの根源を形成してから、日本に持ち込んでいる可能性もあるとのこと。日本政府が関わっていると他国に知られれば、国家間紛争へ発展する火種にもなりかねないので隠密に調査してほしい。  これが、今回秋山からお願いされた依頼だ。
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