第34話 領域外フリーフィールド

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 鬼が視界を塞いでいる間に、プレイヤーは各々に姿を潜める。日本固有の遊びというわけではなく、世界中に類似の遊びが存在する。 『かくれんぼ』 「かくれんぼ……ねぇ」  1つ小さなタメ息を吐いてしまう。どうも『かくれんぼ』というワードが好きにはなれそうにもない。  何も『隠れる』という事に対して嫌悪感を抱いているわけではない。寧ろ、認識阻害率そのものを否定しているわけでも、疎かにしているわけでもない。  『かくれんぼ』には、鬼と逃げる者に対して、圧倒的な差がまず存在する。逃げる者からすれば『鬼に見つかるまで隠れ続けなければいけない』。  つまり、逃げる者という弱者に『救い』は存在せず、常に鬼が捉えにくる瞬間まで怯えたまま隠れなければならない。 『続く』かどうかは自分の隠れ続けるセンスと見つからない『運』を要する。  それに、プレイヤー主催という点も気にくわない。プレイヤーレベルがしっかりとしたルールを設定している上で開催しているとはとても思えない。盲点やルールの穴が多数存在し、参加者側が不利になるようなケースが多々存在しているだろう。 「治癒屋。あの女の話では、イベントに参加する人が少なくなってきたという話だったな、気にならないか?」  何時(いつ)に無く険しい顔をしているハイカカオ。先程、ヘルナンデスと生命の全てをかけた時と良く似た表情を俺に向けている。  疑いの目が似合う男もそう多くない。少しの変化さえ見逃さないその眼差しは無駄な光を放っていない。その受け入れない姿勢は俺は嫌いではない。  そう、悪くない。  疑うこと、信じないこと。そして、素直に受け入れないこと。  目の前にある事象をそのまま受け入れれば何の変化も気づけない。現実世界でも、そしてゲームの世界でも……イエスマンが唯一の負け組なんだ。  俺はハイカカオを手招きし、リシャミーと少しだけ距離を取ってから小さな声で話し始めた。 「あぁ、気になる……が、気にするのはそこじゃない」 「は?どういう意味だ。説明しろ、治癒屋」 「ひっかかる点は多々ある。が、まず、リシャミーがこの世界にいることが気になる」 「それは、イベントの人気が……」  ハイカカオの表情が一変する。どうやら気づいたようだ。  イベントの参加者、それもプレイヤー主催レベル(・・・)の参加者の低下ごときで、ネット界のスーパースターであるリシャミーに依頼した件だ。  ただ単に、参加者が減ったからとの理由だけで呼ばれたようではなさそうだ。 「気づいたか、ハイカカオ。リシャミーが関わろうとしている件、どうやら裏がありそうだな」  
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