第34話 領域外フリーフィールド

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(4) 「は~い!!みんなぁ~準備はいいかなぁ?!日本では鬼に有効だとされてる豆を手一杯に握りしめる風習があるよ?!みんなも、ビーンいっぱい食べてから挑めば、逃げ切れるかもね!!さぁ、スタートのアイズは、この方、主催者様のルカラさん~~」  やはりリシャミーの司会は華があった。開場に集まったプレイヤー誰もが、リシャミーの仕草や言葉一つひとつに魅力されていた。彼女目当てで今回参加していそうなプレイヤーは大体100人ぐらいといったところか。他のプレイヤーは、今回で初めて彼女の存在を知ったようだ。 「あの司会の女は今夜俺が腰を振らせるぜ」「いや、俺だ!!」など、大声で騒がれていた。日本のゲーム内とは全くジャンルの違う声援が会場のあちらこちらから聞こえてくる。  だがな、リシャミーよ。  『かくれんぼ』の鬼と『節分』の鬼は違う種族の鬼だと俺は推測する。よって、豆を服用しようが、投げつけようが、かくれんぼの鬼には効果は期待できないとだけ忠告させてくれ。    華麗なマイクパフォーマンスの間に、今回の『かくれんぼ』の詳細なルールが説明された。そして、リシャミーからマイクのバトンを受け継いだ、あのルカラという人物…… 「ようこそ。俺が企画した鬼畜ゲーに参加したいって奴が、ここまで集まるとはな。謎の失踪するという噂が立つ程人気が出てしまったから仕方ないか」  リシャミーが事前に俺達に教えてくれた情報によると、主催者ルカラは、現実世界では 行動心理学の研究者らしい。 『人が窮地に追い詰められたときの行動心理』を研究テーマに多くの動物を瀕死状態にしてから、本能と行動の(はざま)を分析している。  そして、動物だけに留まらず……  こうして、ゲームの世界に紛れ込んで、プレイヤーである人間の実験にも手を染めてきている、人間の皮を被った悪魔である。  そこまで知りつつも、リシャミーが何故このような穢い裏事情があるイベントの司会に参加することを決めたのか。  そっちの方を解き明かさないとな。  主催者ルカラの合図により、会場の端に黒く淀んだゲートが現れた。 「さぁ、勇気ある者はこのゲートを潜りなさい。向こうに待つ鬼に遭うことなく逃げきれたら、宣言通り、私が開発したオリジナルスキルをプレゼントぉ!!さぁ、狂人どもよ、恐怖で踊り狂ってくれたまえ」  参加者からすれば、お化け屋敷の入口にいる恐怖を煽るピエロのようにしか見えていないのだろう。『失踪した件も恐怖を演出ためのスパイス』だと、気にする素振りもなく、参加者はゲートへ次々と飛び込んでいた。    
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