第34話 領域外フリーフィールド

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 飛び込む世界を間違ったと後悔したって遅い。冷たく澄んだ風が通りすぎる度に、この場にいる違和感におもい知らされる。  秋山の依頼で新たな場に飛び込んではみたが、2度ともとの場に帰れない気がする。今や俺の居場所と化した診療所も、俺の仕事をサポートしてるフリをして、乗っ取ろうとしている幽霊(テローゼ)もこの世界には存在しない。  ましてや、ここは異国の地のプレイヤーが創作したゲートの中。日本で言えば、フリーフィールド上に現れた禁則地のようだ。 「つまらんな」  ここまで溜め息が似合うプレイヤーは他にはいないだろう。ポケットに手を突っ込んで欠伸をしつつ、渇いた音を咽から鳴らしている。 「あのなぁ、遊びじゃないんだぞ?」 「治癒屋。遊びじゃないゲームって存在するのか?」  ……お?!  さすが、頭がキレるハイカカオさん。仰る通りでして。だが、この場合は『冗談』ではすまされないぞ?という意味でいったのだが、俺の言葉足らずが原因だ。  言葉足らずと言えば、先程のリシャミーもそうだ。主催者側から聞かされたルールをそのまま参加者に伝えてるのだとは思うが、やはり欠陥ルールには違いなかった。 ・鬼に見つかり、動けなくなれば終了 ・逃げきれたら主催者側から用意した物をプレゼント  ざっくりと言えばそんな所だった。  一見簡単なルールのようにも感じる。だが、わからないことばかりだ。  鬼とは一体なんなのか。俺達は誰が鬼なのか、つまり鬼の正体を聞かされていない。何体いるかもわからない。何に隠れ、何から逃げないといけないかを知らされていないままゲームはスタートした。  また、『動けなくなる』とは一体なんなのか。  かくれんぼをし、鬼に見つかるまではわかるのだが、『動けなくなれば終わり』の言葉がもたらす意味とは。  逆に、動くことができれば、まだ負けたことにならないのだろうか。  あれこれ悩んでいても仕方ない。別にかくれんぼに興味はない。文字通り、俺やハイカカオは今は札付きの人間。その場しのぎで隠れることができれば、ヘルナンデスもここまで追ってはこないだろう。
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