第34話 領域外フリーフィールド

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「見たか?」 「あぁ、ハイカカオに見させられた」 「かくれんぼの鬼の正体なんて所詮あの類いだ」  プレイヤー3人の陣形は見事だった。しかし、見えない敵を相手に初見で『逃げ切れ』だの『攻略しろ』だの言う方が無理な話。  プレイヤー3人を襲ったのは、死神ネルガル。ステルスマントを纏い、巨大な鎌でプレイヤーの首を刈っていた。  日本のイベントでも高難易度のBOSSの一角として君臨しているが、日本での設定と明らかに違っていた。  それはステルスマントの性能だ。日本でのステルスマントの性能は、BOSSの姿は見えなくとも、BOSS名の標示は常にしていた。  つまり、BOSSの姿そのものは見えなくても、ほとんどの位置や距離間はだいたい把握できていた。それは、フィールドが暗所であっても、敵の名前とライフゲージは確認できた。  が、この場では明らかに違っていた。BOSS名の標示だけでなく、ライフゲージすら目視できなかった。  死神ネルガルの認識阻害率は99~100%というかなりの高水準をキープしていた。文字通り、ステルス状態でプレイヤーに近づいていたのだ。  そして、鎌を使用した瞬間だけ、殺気により認識阻害率が70%台まで落ちていた。まさに殺される瞬間にだけ姿を現しているような状態になっていたのだ。  俺達はその一部始終を目撃した。  この事により、姿を見せない鬼だけでなく、この一方的な殺戮ゲーム化としている『かくれんぼ』の正体も掴んだ。  それは、プレイヤーに支給されたアイテムについてだ。BOSSである死神ネルガルがプレイヤーに近づくにつれて、イヤホンから不気味な音が聞こえたのだ。  俺が装着しているイヤホンからは、不気味な音がゆっくりと聞こえてきて、一番距離が近くなったときには、その音の感覚が若干だけ早くなった。  おそらく、このアイテムは、BOSSが近づけば近づくほど音が早くなるギミックなのだろう。  殺された3人は、最終的には錯乱のあまり陣形は総崩れしており、無惨にも殺される結果となっていた。  主催者は、プレイヤーが慌てふためく状況下で、プレイヤーがどう行動するのかをモニタリングしているのだろう。  このアイテムは、見えない敵の接近を報せてくれる側面はあるが、見えない敵に対する恐怖心を煽るという側面も兼ねている。  その為、イヤホンを装着せずにいると完全にBOSSの位置が把握出来なくなるため、棄てるという選択も取りづらい。 「さて、奴から逃げきれれば勝利だそうだが、いつまで逃げきれば勝ちと認定してくれるのだろうな」  ハイカカオは溜め息まじりにボソリと呟いた。
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